経済危機で労組は交渉力失う

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

2001年に入った当初は、当年のGDP成長率を4,5%程度と政府まで公認するような好況予測が一般的であった。このため労組では、今年こそ過去の給料調整の遅れ分や失った特恵を回復する好機だと期待していたが、5月から情勢は一転し、労組は下半期からの労使交渉作戦を転換せざるを得なくなっている。

高い成長予測が短期間で悲観的なものに変わった原因は、①6月から前年同期比で20%の節電義務が発令され経済活動が冷え込んでいること、②産業全体の減産に伴い解雇者が増加するとの予想、③さらに、隣接するアルゼンチンが3年連続のリセッションの後に政治経済危機に突入したのに伴い、国際金融界からブラジルも多大な影響を受けると見られて外資が警戒を始めた結果、外資依存度が高いブラジルは外貨不足に陥るとの予想が生まれた結果――等である。

さらに、内国系、外資系を問わず、ブラジル通貨よりもドルで資産を守ろうとドル買いに出たことが重なって、ドル相場は急上昇を起こしており、当然インフレ圧力が増してきた。この圧力を抑えようと政府は金利引き上げ策を強化しており、これが景気の冷え込みをさらに強めかねない情勢だ。

こうした情勢が労組指導者に作戦変更を要求している。労働問題専門家は、労組は99年の経済活動低迷期と同様に、ベアを要求しない代わりに解雇を回避することが、労使交渉の中心となるしかないと見ている。

政府の予想では電力危機は2002年も続くとなっているために、企業は予想もしなかった生産計画の修正を迫られ、余剰人員対策、減産によるコスト高、利益低下などの問題を抱えて、労組のベア要求に対応するどころではなくなっている。

しかし労組は公式には不利を認めず、CUTのジョン・フェリシォ委員長は実質給料引き上げと雇用保障を要求として掲げ、労働省には週当たり労働時間を44時間から40時間へ短縮するよう要請した。また、フォルサ・シンジカルのパウロ・シルバ委員長は、労組史上に例のない交渉困難な年になろうと予想した。

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