職業訓練の現状

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

2000年末に労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)は、職業訓練を行っている全国500施設を対象に調査をした。これらの施設には、

  • 職業訓練校
  • 職業訓練センター、職業訓練を行う雇用サービスセンター
  • 職業訓練を行う高校、大学

の3者が含まれている。以下、この3者に分けて調査結果を紹介する。

職業訓練校

1.訓練生について

各職業訓練校の訓練生の数は平均600人である。中央の省庁・組織(ベトナム労働総同盟(VGCL)など)が管轄している職業訓練校の規模は、平均すると、地方政府が管轄している職業訓練校の約2.3倍である。公立訓練校には、平均で非公立訓練校の3倍近くの訓練生がいる。全ての訓練生のうち、短期訓練コースに参加している訓練生の比率は45.8%、長期コースは47.3%、集中コースが6.9%である。

公立訓練校・中央の管轄下にある訓練校で長期訓練を受けている訓練生の比率は、それぞれ66.6%、70.6%である。これに対し、非公立訓練校、地方の管轄下にある非公立訓練校では主に短期訓練を行っており、短期訓練生の比率は、それぞれ86.5%、87.2%となっている。非公立あるいは地方の管轄下の訓練校は、学校の規模や国家計画による資源配分上、不利な立場にある。

ホーチミン、ハノイ、ハイフォンの3大都市のうち、公立校における長期訓練を受けている訓練生の比率が最も高いのは、ハノイ(81.5%)で最低はホーチミン(52.1%)である。

2.調査期間中の訓練校卒業生

2.1 短期コース

  • 1997年から1999年までの3年間で受講者数が最も多かったのは、運転、情報科学、衣服製造に関する訓練であった。この期間に、5000人以上の訓練修了者がいるのは9職種で、一方、12職種では修了者数は100人足らずである。
  • 1997年から99年の各年の訓練校卒業生総数は10万2400人、10万1500人、9万7600人である。この間、僅かではあるが短期訓練修了者の人数が減少した。
  • 短期コースの受講者が際だって多いのはホーチミン市で、ハノイ市の約13倍、ハイフォン市の約20倍である。この事実は、ホーチミン市で職業訓練への需要が非常に高いことを示している。なお、これら3都市で短期訓練生の50%が訓練を受けており、これらの3都市の経済に好影響をもたらすのではないかと考えられる。しかし、これらの都市では、訓練修了者に対し、仕事を紹介する体制が整っておらず、将来、これを改善する必要がある。
  • 主要な結論として、公立校における短期訓練生の人数は減少傾向にある一方、非公立校における短期訓練生はかなり早いペースで増加しつつある。これは望ましい傾向で、職業訓練計画作成において考慮されるべきである。

2.2 長期コース

  • 平均すると一職種あたりの長期訓練コース受講者数は、97年からの各年で3万6200人、3万400人、3万3500人であった。この3年間で、受講者総数は、ほとんど変わっていない。97年から99年までに卒業した訓練生の累計が1万人を超える職種は3職種あった。同様に5000人を超える職種は6職種、100人未満の職種は5職種である。長期訓練者の数が多いのは運転手の訓練である。これに対し、短期訓練者が多い情報科学の分野で、長期訓練を受けている人の数はかなり少なく、3年間で約1000人に過ぎない。
  • 短期訓練とは対照的に、長期訓練生が最も多いのはハノイで、ホーチミンの約3倍、ハイフォンの約5~6倍である。これは、ハノイの訓練校が、長期訓練で成果を上げる潜在力を持っていることを示す。
  • 短期訓練とは異なり、長期訓練生は公立校に多く非公立校に少ない。

職業訓練センター

1.訓練生について

  • 一般に、訓練センターは施設を最大限に活用していない。施設利用率は73%で、職業訓練校が施設をより有効に活用しているのとは対照的である。
  • 公立、非公立の区別、あるいは、中央あるいは地方の管轄にかかわらず、訓練生の人数は、大部分の訓練センターで500人以下である。1500人以上の訓練生がいるセンターは、3大都市(ホーチミン・ハノイ・ハイフォン)に最も多い。

2.調査期間中の訓練センター卒業者

  • 1997年から2000年までの職業訓練センター卒業者数は、それぞれ、1997年20万1500人、1998年21万7000人、1999年20万8300人、2000年22万6400人である。これらの人数は、職業訓練校短期コース卒業生の約2.2倍である。職業訓練センターに配備されている施設の特性から、職業訓練センターは短期訓練実施に適している。これに対し、職業訓練校では、長期訓練あるいは集中訓練に、より力を入れるように計画すべきである。
  • 3大都市だけで、全国の訓練センター卒業生の53%が出ている。そのうち、ホーチミン市が32%以上を占めているが、1997年から2000年までにシェアが低下している。一方、ハノイ市の訓練センターの卒業生のシェアは97年の20.1%から2000年の32.1%へと急増している。ハイフォン市のシェアは約12%と安定している。

職業訓練を行う高校、大学

1.職業訓練の規模

  • 全職業訓練生の45%が、高校、大学で行われる訓練を受けており、その過半数は長期訓練を受けている。学生の8割が職業訓練を受けている高校、大学は、約20%に上る。
  • 職業訓練校の場合同様、各校で訓練を受けている学生数は通常、500人以上1000人以下である。ホーチミン市は例外的で、25%の高校、大学で1500人以上が職業訓練を受けている。

2.訓練の動向

  • 1997年から1999年まで長期職業訓練を受けている学生数は増加傾向(1997年1万8300人、98年2万3100人、99年2万5700人)にあるが、短期職業訓練を受けている学生数は、ほとんど変わっていない(同2万2000人、2万400人、2万2600人)。平均すると、1校あたりの長期訓練生は約250人、短期訓練生は約270人である。高校や大学は、長期訓練で大きな役割を担いつつある。
  • 長期職業訓練を受けている学生のうち、国家が計画した職業訓練を受けている学生の比率は、97年83%、98年83%、99年86%と、職業訓練校の場合よりも速く増加している。これは、一般に高校、大学の方が設備に恵まれている場合が多いためと考えられる。企業との契約で長期職業訓練を受けている学生の比率は低く、3~4%に過ぎない。
  • 高校、大学で国家が計画した長期職業訓練を受けている学生の比率は、ホーチミン市に比べ、ハノイ市、ハイフォン市でより高い。

3.調査期間中の卒業生

3.1 短期職業訓練生

  • 訓練を修了した高校・大学生は、97年2万2000人、98年2万300人、99年2万4000人であった。高校、大学で訓練が行われている職種は、職業訓練校で行われている訓練の職種よりも数が限られている。短期職業訓練で最も多くの訓練生を集めているのは、運転手になるための訓練(毎年、約4000人)である。それに次いで多いのは衣服製造についての職業訓練である。3年間を通じて100人未満の卒業生しかいなかった職種は10職種である。
  • 職業訓練校の場合と多少似ていることであるが、ホーチミン市の短期訓練生の数は、ハノイ市の約3倍、ハイフォン市の約18倍である。これら3都市で、高校・大学における短期職業訓練生の82%(ホーチミン市だけで60%)を訓練している。これらの大都市では、長期訓練を強化すべきなので、必ずしも好ましい傾向とは言えない。

3.2 長期職業訓練生

  • 97年から99年までの長期訓練卒業生総数はそれぞれ、1万3400人、1万5400人、2万1700人である。高校・大学の長期訓練生の数は全ての職種で顕著な増加を見せている。電気技術、機械が最も多くの訓練生を集めている。8職種で、訓練生の総数が、3年間で100人未満であった。
  • 訓練校の場合同様、長期訓練生が最も多いのはハノイであり、高校・大学が最も多いことを反映している。ただし、このことは、ハノイ市が雇用創出に力を入れなければならないことも意味している。3大都市だけで、高校・大学における長期職業訓練生の55%を訓練している。

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