ココナツ価格の低落と農業労働者賃金動向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

多くのココナツ農家が、コプラ(乾燥したココナツの実)価格の低迷により苦境にあえいでいる。栽培を見合わせ、中には離農する農家もでている。

ココナツ農家は、1999年当時コプラのキロ当り単価が17~18ペソで、年間1万ペソ以上稼げたが、2000年には、キロ当り2.75~3.25ペソにまで下落し、その結果年収が2000ペソにまで減少した。2001年に入ってもココナツ価格は低迷している。

農家はココナツ栽培を手控えるようになり、政府に対しココナツ農家を窮地から救うためにココナツ基金を使用するよう要請した。ココナツ農家は、地域によっては他の農産物に転作できないところもあり、210万ヘクタールのココナツ農園の耕作が放棄されている。今後さらに多くの農家が栽培を放棄すると予想され、生産量も激減すると予想される。

農業省は、2001年ココナツの樹1本当りの生産量は、標準的な75個から38~40個に落ち込み、単位面積当りの生産量は、半減すると見積もっている。

このため農業省は、ココナツ農家を支援するために6億7000万ルピーの貸付金計画を発表した。この資金は、コプラの販売に直接関与している農業団体の様々な事業に使用される。

また、農業省は、農家収入の増加を目的に、175のココナツ農家協同組合にコプラの直接販売事業を開始することを認可した。ココナツ農家協同組合側は、直接販売に従事している農家が満足できる価格になるよう関係機関に働きかけるとしている。

ココナツ産業関係者は、多国籍洗剤製造メーカーによって提訴された裁判に農業省が関与することを希望している。この裁判で多国籍企業は、1987年にアキノ大統領によってなされた、洗剤の活性剤の製造において60%以上の国産ココナツ油を使用することを義務付けた大統領令第259号の無効化を求めている。

なお、ココナツは、サトウキビと並ぶ代表的な輸出農産物であるが、その価格の低迷は農業就労人口の変動にも影響を与えている。

農業就業者数
1960 1970 1980 1990 2000 2001年1月
就業者総数 8539 11358 16434 22894 27733 28087
農業就業者数 5224 6100 8453 10381 10622 10252
割合(%) 61.2 53.7 51.4 45.3 38.3 36.5

出所:NSO及びDOLEの労働力調査

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