現代建設の経営再建と「企業構造調整特別法」の施行

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

現代グループの母体企業である現代建設は1998年3月から資金繰りが急速に悪化し、2000年4月からは債務超過のため社債の発行が禁止され、2000年には3兆ウォンの赤字を出すなど、債権金融機関の救済措置(財務構造改善計画に対する支援)なしには経営再建はほとんど望めない状態に追いこまれた。その間、同社は5大経営不良企業の一つとして韓国経済にとっても景気回復の足を引っ張る重荷になっていただけに、早急な解決策が求められていた。

6月末までの現代建設の財務構造改善計画最終期限を前に、その財務構造改善支援策をめぐって難航していた債権金融機関間の分担の調整にも少しずつ進展がみられた。これを後押しするように、「企業構造調整特別法」が7月18日に国会を通過したこともあって、同社の財務構造改善計画に立ちはだかっていた債権金融機関間の調整問題も徐々に解決のメドがつくものとみられている。

債権金融機関協議会は同社の財務構造改善計画の実行に当たって、まず建設工事受注に支障をきたさないよう負債比率300%の資格要件をクリアするため、無担保債権総額2兆2000億ウォンの63%に当たる1兆4000億ウォン分の代わりに同社の株式を取得するほか、7500億ウォンの有償増資と7500億ウォンの転換社債発行などにより、総計2兆9000億ウォンを支援することを決めた。

しかし、一部の債権金融機関が最後まで同計画に対する支援を拒んだため、最終的な支援規模は6月末の時点で当初の目標額より2406億ウォン少ない2兆6594億ウォンにとどまった。ただ、同社は8月1日から施行される「企業構造調整特別法」の適用対象になるため、前述のような一部の債権金融機関も、債権金融機関協議会の決定に従って同社の財務構造改善計画に対する支援策に加わらざるをえなくなるとみられている。

そして同社の労使はこのような財務構造改善計画に基づく経営再建を早期に実現するために6月12日、次のような内容を盛り込んだ「労使共同宣言」を採択した。

まず、労使は運命共同体として早期経営再建のために痛みを分かち合い、原価節減、生産性向上、人員削減などの構造調整に全力を尽くす。第二に、労組は賃金凍結をはじめ2001年の賃金及び労働協約の締結事項の全てを会社に一任する。第三に、労組は経営陣に対する信頼を基に、経営再建を成し遂げるまで営業活動に支障をきたす恐れのある全ての争議行為を中止する。第四に、労組は会社と債権金融機関の間で締結される「経営正常化約定書」に同意し、その履行に全面的に協力する。

その他に、労使は一人当たりの生産性を国内建設業界最高の水準(15億ウォン)に引き上げることを目指して、早期退職、在宅勤務、無給休職(教育訓練)などの方法で年内に1000人を削減することで合意した。

これを受けて会社側は6月13日、次のような具体的な人員削減策を明らかにした。まず6月20日まで早期退職者を募集し、早期退職希望者全員に勤続年数に応じて基本給の平均4カ月分を慰労金名目で(割増退職金、その財源20億ウォンは役職員のボーナスの5%を3回天引きし、当てる)支払うほか、英語、コンピュータなどの教育プログラムを実施するなど、再就職及び起業を最大限支援する。

第二に、在宅勤務希望者や事業本部待機要員(余剰人員)などに対しては6~9カ月間の在宅勤務を命じ、同期間満了後、勤務評価委員会の評価を経て復職の可否を決める。第三に、1~2年間の無給休職を希望する社員に対しては、海外留学や国内社外留学、などが必要な者に限って認め、休職期間終了と共に復職させることなど。

その一方で、債権金融機関の新たな資本注入により、同社の負債比率は2001年末基準で298.1%に下がることになるほか、債権金融機関の持ち株比率は86.98%に上るのに対し、現代グループのそれは3.54%にすぎなくなるなど、同社の所有構造も大きく変わる。

これを受けて公正取引委員会は7月20日、公正取引法上の要件を全て満たしたとして、同社と現代エンジニアリングの現代グループ系列からの分離を承認した。これにより、同社は上位30の大手企業集団から外され、「株式相互持合禁止、出資総額制限、相互債務保証禁止、金融・保険会社における議決権制限、大規模の内部取引に対する取締役会議決及び公示義務など」の適用を受けずに済むことになる。ちなみに、1998年3月に流動性危機に陥って以来系列分離が進んだ現代グループは6月末現在、本体の現代グループのほかに、現代自動車、現代精油、現代産業開発、現代百貨店など5つの企業グループに分離された。

そして同社は主債権銀行である韓国外換銀行との間で締結される「経営正常化約定書」に基づいて、7月中に2001年度の経営目標や構造調整などを盛り込んだ経営計画書を提出し、その実績について定期的に評価を受けるが、実績不振の場合、経営陣はその責任をとることになる。

以上のように債権金融機関の新たな資本注入により、同社は債務超過に陥っていた状態から一気に健全な財務構造をもつ企業へと生まれ変わっており、経営再建の鍵は収益性重視の工事受注如何にかかっているといえる。同社の発表によると、厳しい経営環境下の上半期にも国内工事受注額は公共部門で1兆1370億ウォン、民間部門で1兆615億ウォンの合わせて2兆1985億ウォンに達し、業界トップの実績を記録している。下半期からの工事受注の行方が注目されるところである。

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