海外出稼ぎ労働者の保護

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

タイの記事一覧

  • 国別労働トピック:2001年8月

台湾への出稼ぎ

タイ人労働者の海外就労先の1位となっている台湾で、2001年5月16日から外国人労働者の入国制限を行うことが発表された。これは台湾国内の労組が失業率低下のために台湾人労働者の雇用確保を政府に要求したことに応えたもの。2001年4月現在、台湾には3万2000人以上の外国人労働者が、公共の建設現場などで働いているが、そのうち約9割がタイ人とされている。

5月28日付けバンコクポストによると、労働と社会福祉に関する上院委員会は、台湾で就労するタイ人労働者の様々な問題の解決に乗り出すことを明らかにした。プラテープ上院議員及び同委員会事務局長は、同委員に台湾で働くタイ人労働者からの書簡が数多く寄せられており、その内容は就労に際して搾取されたり、騙されたり、という相談が多いと述べている。労働者の多くは、不健康な環境で不自由な生活を余儀なくされ、使用者と仲介会社に騙される傾向があるという。これまでに、台湾で死亡したタイ人労働者は20人にも上っている。

労働者達は政府に対して、職業斡旋料の引き下げ、海外渡航の際の教育訓練、台湾人使用者に対してタイ人労働者に安全で清潔な職場と住居を提供するように働きかけて欲しいと要求している。

ナコンラチャシマ県の同委員会サワイ代表は、委員会のメンバーは緊急にこの問題について調査し、政府と協力して労働者救済のための解決方法を探っていきたいと述べている。

日本への出稼ぎ

タイから日本へ就労目的で渡航する労働者の大半はサービス産業従事者で、特に女性労働者が多い。2001年5月、スラナリ大学の女性社会学者2名が、日本で性産業に従事する女性を取り上げたフォーラム「日本―天国か地獄か?-」をシリンドホン文化人類学センターで開催した。

2名の研究者は、1995年から1997年にかけて日本を訪問のうえ、情報を収集し報告書『限界的な世界に生きる:日本におけるタイ人移住者の生活とコミュニティー』(原題:'Surviving in the marginal world: Life and community of Thai migrant workers in Japan')をまとめた。

タイではパスポートを取得済みの女性ならば、斡旋業者に依頼すると2~3万バーツの手数料で簡単に渡航手続きが完了するという。日本の経営者は斡旋業者に対して仲介料を支払いその他の費用はタイ人が日本に到着後、労働契約を結んだ日本の雇用主に返済する。その相場はおよそ70万バーツ(日本円で約210万円)という高額なものとなっている。賃金が最も高いサービス業の平均月収(バンコク地域全平均)が約1万バーツ(約3万円)であることと比べると、その額の大きさが理解できる。

セミナーでは、タイ人女性が日本の性産業において悲惨な労働状況におかれていることを明らかにし、日本で性産業労働者に対する需要が減少しない一要因として、日本女性の地位向上といった社会変容を挙げている。2名の研究者によれば、日本の女性は、高学歴になるにつれ男性主導の社会に反発し、キャリア志向になっている。そのため、未婚男性が増加、その解決方法をタイ人を含めた外国人女性に求めているのではないかと分析している。

タイ人も日本を「天国」のような国との幻想を抱き、公表されていないネガティブな情報を無視してしまう傾向があると指摘、安易な就労目的の渡航に十分な注意が必要と警告している。

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