外国人労働者入国制限制度と不法就労外国人問題

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

労働福祉省は2001年5月、チャバリット労働福祉省副大臣を委員長としたタイ国内の不法就労外国人労働者を管理する委員会を設立することを明らかにした。

研究者や外国人労働者を雇用する民間企業経営者らは、最近の外国人労働者に関する研究から推定すると、約70万人の外国人労働者が必要としているが、内務省は安全保障を理由に9万9600人の現状維持を主張している。

タイでは、1990年代から 農業、建設土木など、いわゆる3K労働部門での労働力不足に悩まされている。そのためそれらの業種の使用者からの強い要望に応える形で、政府は1996年より外国人労働者の合法的な雇用登録を開始した。外国人労働者の多くはタイと国境を接する、ビルマ、ラオス、カンボジアの出身で、特に国境地帯である北部・東北部において精米業や土木工事などに従事している。

しかし1997年のアジア経済危機以降、タイの失業者が増加するに伴って、タイ国民の雇用確保のために外国人を雇用するのは控えるべきとの声が高まり、労働政策にも、タイ人の雇用優先が反映されていた。だが実際には、3K業種への就業を希望するタイ人は少なく、使用者らは労働力不足に直面せざるを得なかった。

そのような中政府は2000年11月、ビルマ、ラオス、カンボジアからの9万6684人を合法的な外国人労働者として、37県18業種に限定して就労を認めることを決めた。しかし、実際にはビルマ人だけで推定100万人がタイ国内で就労しているとされており、この数値は非現実的なものとみられている。例えばビルマ国境のターク県では、約10万人の外国人労働者がプランテーションやに従事しているが、縫製業は許可された業種には縫製業は入っておらず、しかも割り当てられた登録可能な労働者数はわずか2225人に過ぎない。

一方、外国人労働者に対する社会保障制度が存在しないため、外国人の就労に関する法律では使用者が外国人労働者に対して最低賃金に福利厚生手当てを上乗せするように定めている。しかし現実は、使用者のコスト削減の思惑から最低賃金以下で働かされる労働者が多数存在する。

更に、2001年6月1日に外国人就労法改正案が可決され、外国人労働者の労働許可証の発行手数料が現在の300バーツ(1バーツ=円)から3000バーツに、就労許可の更新・延長手続きは1000バーツから1万バーツに、業種及び就業地の変更手数料は500バーツから5000バーツに引き上げられた。このような大幅な引き上げは、外国人労働者数を抑制しつつも税収の増加を図ろうとする政府側の意図と思われるが、実際には、登録料が高すぎるため外国人従業員を正規登録しない使用者が増えることになり、結果的に不法就労者を増加させると予想される。

また不法外国人就労者の医療費の増大や、労働者の子供の教育問題、また外国人による犯罪の増加など、二次的な社会問題も発生している。そのため、警察省は労働福祉省と協力し、この4年間で「不法外国人就労者ゼロ」をスローガンに取締りを強化していくことを明らかにしている。

表:タイの登録外国人労働者数(出身校別)と認可業種数

県数 業種 期間(年) 国籍(人数)
ビルマ    ラオス    カンボジア
1996 43 2 256,492 11,594 25,455 293,541
1998 54 47 1 79,057 1,261 10,593 90,911
1999 37 18 89,318 1,164 9,429 99,911
2000 37 18 90,724 1,011 7,921 99,656

出典:Bangkok Post、2001年6月3日

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