EUの失業の定義の変更と失業率の低下

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

Eurostat(EU統計局)の2001年1月からの失業についての新しい定義を適用すると、スペイン労働力統計(Spanish Labour Force Statistics)による2001年第1四半期のスペインの失業者数は46万人減少した。また、この新しい概念により就労人数も減少し、失業率も2.43ポイント下がった。新しい方法によると、生産年齢人口比も再び全人口の50%未満、すなわちEUの平均よりほぼ7ポイント低くなるであろう。

Eurostatは過去数年にわたって、ILOの勧告に基づき、各加盟国で用いられている失業の定義の一致に向けた作業を行ってきた。その結果、2000年9月に採択された欧州委員会規則(注1)(European Commission Regulation)が各国で実行されつつある。

旧定義によると失業者数は、特定の年齢以上で無職(すなわち有給雇用でないあるいは自営業者ではないこと)で、またその時点で働くことができる(2週間以内に働き始められる)すべての人々で構成されていた。その上、先立つ4週間の間は定められた手順に従って、有給の職を得るためまたは自営業としての仕事を探し続けていなくてはならなかった。しかし、年齢の上限および下限の設定、当人が働いているかもしれないが失業中とされる場合の就労時間に関する定義、そして求職のための積極的あるいは消極的ステップとは何かを決定することは個々の加盟国の裁量にまかされていたので、これらの概念が度々加盟国間の相違の原因となった。

新定義は、既存の解釈上の違いを減ずるために、最低年齢と最高年齢を15歳と74歳と設定した。また、当人が働いているかもしれないが失業とみなされる場合の就労時間に明確な上限も設定した。新しい規則では1週間につき1時間未満が限度とされ、1時間以上働いている人は雇用されているとみなされる。また、積極的に仕事を探しているとみなされる形態も特定された。それには、公共職業安定所あるいは民間の職業紹介所と連絡をとっていること、事業主に直接接触することが含まれる。しかし、公共職業安定所への接触が積極的なステップであると認められるには、求職者の氏名を職安のファイルに初めて登録し、見込みのある求人先を探すか職安係官の雇用機会に関する示唆を受け入れなければならない。求職者が事務的な手続きとして職安の登録を更新するだけでは、積極的なステップとはみなされないことになる。また、季節労働者および一時帰休者を扱う上での明白なルールも定められている。

新定義の適用は2001年1月に始まったが、各加盟国が全面的に適用するためには少なくとも2年を要すると思われる。これは、加盟国がデータ収集のための調査に余分の質問を加える必要が生じる場合もあるからである。同様の理由で、歴史的にデータを算出することができなくなり、一連の統計に中断が生ずるであろう。失業に関する新定義は、欧州地域データで失業推定数を減少するであろう。しかし現時点では、新定義が欧州地域の失業データに及ぼす正確な影響はわからない。実際の進展と統計上の影響を識別するために、実施期間中に綿密に監視する必要がある。

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