2000年のスト件数は15%減少、しかし損失時間数は増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

2000年は雇用増が過去10年間で最大の5%近くに達したが、ストによって失われた労働時間数は、前年よりも70%近くも増えている。

過去にさかのぼって見ても、景気と労働争議の関係は不明である。過去10年間を通じて、ストによる労働時間の損失は雇用喪失と平行して減少し、年間50%近い減少に達した。そして、雇用の回復はおおむね、労働争議の悪化と重なって起こっている。これにも増して不可解なのは、ストの頻発が、労組・使用者団体・政府による雇用政策をめぐる大合意と時期的に一致していることである。

2000年を通じ、スペインでは賃金労働者の10%強がストに参加した。前年比でも4%増えており、スト動員力としては最大だった1992年のレベル並みである。またストによる損失労働時間数は全労働時間の0.096%と1992年以降最大で、対前年比では参加労働者数の増大を大きく上回っている。

言いかえると、2000年のストによる損失労働時間数は、1040労働日に対して1労働日の割合だった。1990年代の初めには500労働日に対して1労働日が労使紛争に基づくストその他の動員にあてられていたが、これは年々減少し、1998年には2300労働日に対して1労働日と、民主化以降最小になっている。

スト件数はほぼ20年間にわたって減少の一途をたどってきた。これは1990年代初頭の景気後退期以来見られなかったことである。過去を振り返ってみると、スト件数の減少が止まるか早まるかが景気局面の動きを知るよい指標となり、さらには景気予測の役割を果たしていたとさえ言える。経済成長度が下向きになるとスト件数は大きく減り、景気回復が始まるとスト件数の減少が鈍るという傾向が見られたのである。

このように、スト件数とストによる損失労働時間数の動向は一致するものではないが、これは明らかにスペイン労働市場により広範な広がりを持つ労使関係の傾向に起因している。言いかえれば、スト決行の決断には簡単に達しないものの、いったんストとなると参加者数・継続期間ともに増え、より反響の大きなものになるということである。

スト1件当たりの参加者数は1990年代半ばより増加する一方で、2000年には平均でほとんど300人と1990年代初頭並みに戻っている。ストに参加した労働者1人がストを行った時間は、平均で1.9日である。この数値は特に最近5年間で変化が激しかったが、2000年には対前年比で50%も伸びている。一方、6日以上ストを行った労働者は全参加者の1.5%だけである。長期スト件数は前年に対して半減しているが、特に過去5年間で見ると全スト件数の25%から1.5%へ激減している。

団体交渉は、広く取られる手段であるが、ストの原因となることは少ない。2000年で最も多かったストのタイプは、労災問題や労働関係立法にからんだ要求など、より一般的な性格のものである。

しかし、団体交渉から派生したストへの参加者数は、1998年の5万人未満から10万人以上へと倍増したことも注目される。1980年代以降、団体交渉は闘争的な性格を弱める傾向を示していたが、ここへきてその傾向が変化したようである。

その他のより一般的な性格のスト(1日だけのものがほとんど)と異なり、団体交渉から派生するストは継続期間が長引く傾向がある。したがって参加者数は10%でも、損失労働時間数では20%にのぼる。2000年には前年比で倍増しており、1990年代でも最大となっている。

このタイプのストに限って見ると、参加者1人がストを行った時間は4.5日で、1995年の2.3日より大きく長期化していることがわかる。一方、2000年にはこれ以外のタイプのストでもわずかながら期間が伸びる傾向が見られたが、参加者1人当たりで1.7日となっている。労働問題以外の原因で行われるストはさらに短く、1.1時間である。

2000年を通じて行われたすべてのストについて見ると、スト期間は平均で1.6日で、1999年の1.3日より長くなっている。一方、スト全数の90%は期間が6日未満のものであった。これは1994年以来見られなかった高い割合である。

2000年に行われたストは600件強で、1998年を除き過去20年間で最少である。前年比では15%以上と大幅に減少している。1980年代半ばと比べ、スト件数は3分の1まで減っている。特に県単位で行われるストは、より広域にわたって行われるものよりも減り方が大きい。

しかし、スト件数だけを見れば減少しているものの、スト1件当たりの参加者数はここ数年を通じて増える一方であり、また、前述したようにストによる損失労働時間数も増えている。スト1件あたりの参加者数は2000年には300人になっているが、99年にはこの半数にも達しなかった。ストの動員力がこれほど高かったのは1990年代初頭の大規模スト以来初めてであるが、その背景には建設・公共部門などの特定部門で労組が行う全国レベルのストの動員力がある。

実際、ストに参加した労働者の90%は全国レベルの動員に応じたものである。この割合もまた、大規模なゼネストが行われた1990年代初め以来の高い数値で、労組と政府の対立・緊張関係を特徴とする当時の雰囲気が戻ってきたかに見える。一方、州は団体交渉に関わることがなく、したがって州を単位としたストはあまり行われない。

1990年代の初頭以来、全国レベルの大規模な動員は、県単位・市町村単位、さらには工場単位で個別の動機で行われるストにその位置を譲る傾向が見られた。全国レベルのスト以外のストに参加する労働者の割合は、1996年の40%から1999年には90%まで増えている。しかしこの傾向は、2000年になって明らかに破られたようである。

2000年には労組と政府の交渉の断絶が見られたことからも、全国規模の労働争議が再び主役となることが予想される。安定雇用をめざした労働市場改革をめぐる労組と企業の交渉が失敗に終わったため、政府は一方的な措置をとったが、これも主要労組の強い批判を受けている。労組は団体交渉の意味を変えるような改革には断固として反対しており、議会でも議論されている。また、年金制度改革に対しては二大労組の一方の支持が得られただけで、他方は真っ向から反対している。

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