NWC、賃上げ抑制を勧告

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

全国賃金審議会(NWC)は2001年5月22日、「2001-2002年賃金ガイドライン」を発表した。米国経済の減速とともに地域経済の先行きが不透明さを増していること、また昨年労働者は十分な賃上げを享受したことなどを考え合わせ、今年の賃上げは、昨年より抑制するよう勧告している。これを受け政府は翌23日、NWCの賃金勧告を支持する声明を発表し、全文が発表された。

2001-2002年の賃金ガイドライン:賃金コスト管理に慎重なアプローチを

シンガポール経済に大きな影響を及ぼすであろう米国経済の減速と地域の不確実性を考慮し、NWCは今年の賃金コスト問題の扱いには慎重なアプローチを取るべきだと見ている。今年の賃上げ決定に際しては、使用者はCPFの使用者掛金率が2001年1月に4ポイント回復したことも勘案すべきである。そうすることによって、シンガポールのコスト競争力が維持され、雇用の維持が可能になるだろう。

全般的な経済状況と昨年労働者が十分な賃上げに恵まれたことを考慮し、NWCは全体として今年の賃金上昇は昨年より抑制するよう勧告する。具体的には:

  • 好況に陰りの見える経済状況でコスト競争力を維持する必要性を考えれば、利益を上げている高業績企業は、それぞれの業績に見合った賃上げで従業員に報いるべきである。飛び抜けて好調の企業も従業員の貢献を認めるため、ボーナス増額で応えるべきである。
  • 前年に比べ利益が減少し、先行きに不安を抱える企業は、自らの企業状況に合わせ賃上げ率の抑制を考えるべきである。企業業績が改善した場合は、特別ボーナスを従業員に支給すべきである。
  • 損失を抱え業績不調の企業は、賃金凍結、もしくは賃金カットも含めた適切なコスト削減策を適用すべきである。賃上げを考慮中の企業は、賃金コスト増が永続的にならないよう、代わりに特別ボーナスを支給することが可能だろう。

2001年にシンガポール経済が予想以上の好況を呈すれば、使用者は企業の業績に合わせ、従業員に特別一時金を支給することを考えるべきである。

月額可変給(MVC)の即時実施

1999年と2000年に全国賃金審議会(NWC)は、月間可変給の採用を勧告した。要旨は、以下の通り。これは急速に変化する景気状況と競争の激しさを増す企業環境に対処するため、我国の賃金制度に一層の柔軟性を持たせるためである。組合を有する企業によるMVC導入率は、1999年の11%から2000年の29%へ著しく増加したが、組合が未組織である企業の導入率は2.2%から2.4%へ上昇したに過ぎない。

今年賃上げを認める企業は、シンガポールの賃金制度をより柔軟にするために、賃上げ額の全部もしくは相当部分をMVCとするべきである。MVCの早期導入により、企業は突然の景気後退の際に、賃金コストを素早く調整できる。

景気後退の際に、CPF使用者掛金率の引き下げで対処するのは、たしかに効果的であったが、それは半反面、従業員の住宅、医療、老後のための貯蓄に負の影響を与える。NWCは、景気後退の際のコスト削減をCPF切り下げではなく、MVCの削減で行うべきだと見ている。MVCを導入すれば、企業はより柔軟かつ迅速にコスト調整ができ、急速に変化する事業環境でも雇用が維持でき、CPFの切り下げを回避もしくは最小限に抑えることができる。

CPF使用者拠出金の回復

近年の厳しい経済停滞の際に、CPF使用者掛金率の10ポイント引き下げは、単位労働コストと単位事業コストの削減に大きく寄与した。政府は、その後の景気回復を背景に、2000年4月に2ポイント、2001年1月に4ポイントの回復を行った。労働者が住宅、医療、老後資金として十分なCPF貯蓄をえられるよう、NWCは政府に対し、経済が耐え得るペースで、また企業競争力が維持できる範囲で、最終的にはCPF使用者掛金率を20%まで回復させるよう促がしている。この点に関しては、政府が今年後半に経済状況を見極めてから残り4ポイントの一部を回復させるかどうかを決めると述べていることにNWCは注目している。

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