ポーランド/2000年末から2001年初の労働市場

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

ポーランドの制度上の変化は、1990年代初めの目覚ましい高度経済成長と、この高度成長に伴う新しい問題を生んだ。最も重要な問題の1つは、労働市場に出現した不均衡であった。「2000年から2006年の雇用増進および人材開発のための国家戦略」によれば、失業が経済成長に与える負の影響を抑制することが、経済の安定を助け、競争力、自由市場、そして民間の起業家精神といった建設的な発展を支援する様々な要素を効果的に利用することに寄与するであろう。

1994年から95年の間に見られた失業者数の減少という労働市場の改善は99年まで続いた。1999年9月末の就業者数は1600万8900人に達し、登録失業者数は234万9800人であった。即ち、失業率は13.1%であった。

2000年の就業者数は約1570万人で、前年に比較して1.6%少なかった。雇用者数の最大の減少が見られたのは以下の経済部門であった。即ち、鉱業および採石業、建設、林業、運輸および通信である。それ以前の数年と同様に雇用の増加が継続したのは、不動産、企業サービス、貿易、修理、ホテルおよび飲食業である。このことは、調査対象期間中にポーランドにおける経済のリストラが始まったことを示している。リストラの目的は、経済効果の点から見て最も弱い経済部門の活動を削減することであったが、社会の大多数がこのような方策のコストを負担させられることに起因する不満を深めることとなった。2000年12月末に、登録失業者数は270万2600人、失業者数は約15%(35万2800人)増加し、失業率は15%の水準に達した。

2001年の結果は以下の通りである。

  • 1月の企業部門の就業者数は前年同期より少なく、2000年12月よりはわずかに多かった。また、同様の傾向が2001年2月についても見られた。
  • 登録失業者数のさらなる増加が見られ、失業率も同様であった。2001年1月には283万5600人の失業者が職業安定所(labor office)に登録され、失業率は15.6%であった。2001年2月には登録失業者数は287万6900人で、失業率は15.8%に達した。1月と比較すると、失業者数は4万1300人多く(1.5%の増加)、2000年2月に比較すると35万1100人の増加(13.9%の増加)であった。
    就業者数が最も減少した経済部門は、2000年にも減少が大きかった部門であった。これは、経済のリストラ傾向が依然として変わらないことを意味する。
    また、地域性にかかわる要素は開発の多様化に影響を与えるので、大変重要である。これらの地域特有な要素の主なものは以下の通りである。
  • 特定の地域の都市化レベル。都市労働市場の状況は悪化しているが、たとえば2000年にポーランドの都市部の失業率は16.9%に達し、地方部に比べると2.6ポイント高かった。地方に居住する登録失業者数は全登録失業者の50%より少ない43.3%であり、この傾向は2001年も続いている。-特定の州を支配する経済活動の特性(経済活動の単一性)。ある州に時代遅れの生産技術を利用している国民経済の一部門が存在する場合、リストラによりこの部門は排除される。効率を高めようとする経済変化によって企業閉鎖が生じ、その結果失業率が高くなる。職務資格の特有な構造も1つの問題であり、労働者の再訓練に大きな投資を必要とする。
  • -国の人口動態統計(主に性別による)。失業状況は女性の方が、男性より厳しい。2000年には女性の失業率は18%に達し、男性は15%を超えなかった。2001年にも同様な傾向が見られる。
  • 州における特別経済区の機能。特に直接的影響が及ぶ地域で、労働市場に存在する不均衡を減少させるのに役立つ。
  • 地域当局の施策。その活動は投資者に有利な状況を作ることもあるし、あるいは反対に、国全体に実行された経済政策の課題を受動的に反映することもあるかもしれない。そのような活動の結果、当該地域の経済は活性化するか、あるいは経済発展に対する否定的影響が増大するおそれがある。施策は重要な役割を演じるが、それは過大評価されるべきでなく、基本的要素は当該地域経済の既存構造であることを理解すべきである。

労働市場の好ましくない状況がさらに悪化していること、そして失業が構造的長期失業へと変容していることが、使用者が提示する求人数の減少で確認される。この傾向は2000年には年間を通して見られた。使用者からの求人数は60万7900人であったが、これは1999年より7万2800人少なかった。ただ、2001年1月は、職業安定所に提示された求人数が、2000年12月に比較して8800人増加した。求人1人に対して395人の失業者がいた計算になる。前月は473人、1年前は289人であった。2001年2月には、求人数は再び減少(2600人)した。しかし、同時にこれらの求人の対象者数も減少したので(1月は-7200人、2月は-7700人)、国全体では、求人1人に対して374人の失業者がいるという状況になり、前月より21人少なかった。

地理的な立地と条件により、当該地域はその地理を活かした活動を強化できる。観光地は、レクリエーション用の設備を整備増強し、企業がインフラを有利に利用できる条件(訓練集会、会議、会合等)を準備するなどして観光事業に関連する施設を開発することは有益であろう。

失業状態が続くことに関連する社会コストの評価にとって本質的に重要なもう1つの問題は、失業給付の受給資格を持たない失業者の数である。2000年12月末には215万4000人に受給資格がなかった。1年前はその数は35万8300人少なかった。全失業者のうち、失業給付の受給資格がない人の割合は2000年末で79.7%に達した。2001年1月末に、受給資格がない失業者は224万4100人で、全登録失業者数の79.1%を占めた。2001年2月にはその数は228万8700人にのぼり、全登録失業者数に占める割合は79.6%であった。このように調査人口の絶対数の変化にかかわらず、全登録失業者数における無資格者の割合はあまり変わらない。これは、就職するまでに益々長い期間が必要となり、失業給付の受給資格期間を超えることがしばしばあることを示している。この結果、当然貧困度もましてくる。多くの場合、人々は何の収入もなく取り残されてしまう。さらに、全登録失業者数中の失業給付の受給資格がない人々の割合が一定しているのは、両集団の規模が釣り合って増加していることを裏づけている。

労働市場の現状を形成しているもう1つの要素は、労働市場に参加する学卒者の数が増えていることである。2000年には、前年に比してほぼ5%多い中等教育卒業者がいた。大卒者は前年に比較して23.2%も増加した。2000年第4四半期に15歳から24歳の失業率は全体失業率の2倍以上で、34.1%に達した。この年齢層の失業率の上昇が年間を通して最も大きかった(1.6%の増加)。ししたがって、調査年の通年で卒業生の状況は非常に困難で益々悪化していると言える。上記に引用した2001年初めの2カ月間の数値と比較すると、職業安定所に登録した無職の卒業生数は減少した。2001年2月には、1万8600人の卒業生が職業安定所に登録したが、このうち初めて登録したのは8800人であった。2001年1月に比較すると、職業安定所に失業者として登録した卒業生数は1万400人減少した。初めて職業安定所に登録した人は2300人減少した(注1)。この改善にもかかわらず、冬季の数字は典型的とは言えない。卒業生の大半は、学年末に登録することにしているので、より総合的な結果は本暦年末に出る。その結果が、2000年末の状況との比較にはより適しているであろう。

我々は、2000年の統計データを評価の基礎としたが、労働市場における卒業生の状況は、非常に憂うべき状態であると言える。いかなる職業経験も持たず、失意、病気、そして長期的な失業状態に傷つきやすい若年層の状況を浮き彫りにしているからである。残念ながら、国の教育政策は、教育期間は延長しているが、自営への立場を強化したり、就職口を探すための卒業生の活発な行動を強化する条件をつくり出していなかった。この状況を引き起こした原因には様々なものがある。一部は、実際の授業内容の結果であり、また一部は若い人々の個人的な特徴と能力に根ざしている。卒業生、とりわけ大卒者は、資格の問題を考慮したより成熟したアプローチを取る。彼らは自分の能力だけではなく、労働市場のニーズも考慮に入れる。労働市場に結びつく問題に関する知識の水準が低くては、これらの問題に十分に注意を向けることが難しくなる。全卒業生人口に関する中央統計局(Central Office of Statistics, GUS)が行った調査では、卒業生の3分の2以上が労働市場で自分の方向を見つけるには準備不足と感じている(Lots、1998年)。また、学業を終えようとしている人々は、教育システムのすべてのレベルについて、教育が理論的であることを指摘している。よって、消極的な教授方法を棄てる必要がある。学習課程の役割はもっと活発な性格であるべきで、卒業生に意思決定ができるよう、活発に職を探せるよう、そして他者と協力できるように準備させるべきである。さらに、安定した法的解決を欠くことも重要な要素に思える。このように若い人々が労働市場に適応する能力は、このように労働市場に積極的に関わることをためらわせる様々な制約に直面している。

教育レベル別の失業率に関連して、上記の卒業生の状況と労働市場の状況の間には直接的な関係がある。大学教育を受けた者は失業の脅威が最も小さい。このグループの2000年第4四半期の失業率は4.8%であった。さらに、1999年の第4四半期と比較して、失業率が増加しなかったのはこのグループだけである。それは大卒者の高度な資格を無駄にすることが少ないことを示しており、労働市場における数少ない良好なパラメーターの1つである。しかし、教育体制に対して何の管理も適用されなければ、この状況は変わるかもしれない。その状況は、1つには、経営に関する分野で学士や修士を与える大学や他の高等教育機関(主に民間の機関)の数が増えることで左右されるかもしれない。これらの機関は、1999年から2000年の学年には、民間の高等教育機関の50%以上を占めた。他の民間および公的高等教育機関で提供される教育も考慮に入れると、似たような資格を持つスペシャリストが多すぎる状況ができてしまうかもしれない。分析した学年の間に、26万1000人の民間高等教育機関の学生が経営関連分野で学んでおり、彼らはそのような機関の全学生の62.4%を占めていた。

教育レベルの低い人々の2000年末の状況は困難をきわめた。1999年の第4四半期に比較すると、その状況は悪化していた。小学校卒、あるいは未修了の人々の失業率は最も大きく増加し(1ポイント)、20.2%に達した。他の教育レベルの人々の失業率は以下の通りである。

  • 基礎職業学校を修了した失業者の割合は0.8%増加し、19.2%であった。
  • 中等教育以上の学校、および中等職業教育を受けた失業者の割合は0.6%増加し、13.6%であった。
  • 総合中等教育を修了した失業者の割合は0.4%増加し、19.6%であった。

専門的(職業的)資格のない人々の失業水準は最も高いが、労働市場の状況の中では長期的には危険状態ではないように思われる。これらの現在失業している人たちは、これから教育を継続するか、他の方法で彼らの資格を向上させることが期待できる。その結果が就職に繋がるであろう。しかし、もっと心配な要素がある。職業教育を受けた人々、即ち専門資格を持つ人々のかなり高い失業率である。このような状況は多分、教育構造が常に労働市場のニーズに合わせて調整されているわけではないという事実の結果であろう。この調整は、労働市場についての系統的な長期分析の結果と、少なくとも1つの教育サイクルの前に、将来どの資格が必要とされるかを前もって示すことによってのみ達成される。しかし、中等学校教育水準よりも、基礎職業学校の教育水準で現れる不均衡の方が大きいことは強調されるべきであろう。これは、かなり高度な資格への需要が高まっていることを示すものであろう。

本レポートで分析された統計データは、失業者が専門性の低い活動をしていく過程を示している。1年前の同月の失業率は14%のレベルであった。経済成長の減速により、2000年の最終四半期のGDPの増加は2.4%であった。それは通年で記録された総ての数値の中で最も低い増加率であった。2000年の上半期は5.6%の増加であったが、後半期に2.8%まで落ちた。平均すると、1年間のGDPの増加は4.1%であった(注2)

2001年第1四半期の経済成長のペースは、2000年第4四半期の数値と変わらないと予想されている。しかし、本年の後半には成長のペースはわずかに速まり、本年末にはGDPの成長率が3.8%~4%に届くと期待されている。しかし、このペースは、増え続ける失業の要因を排除するには不十分であると思われる。「2000年から2006年の雇用増進および人材開発のための国家戦略」に策定された失業予測推定を分析すると、同様の結論に達するであろう。分析により、我々がより高度の経済成長(6~7%のGDP成長)を仮定した場合のみ、失業水準と厳しさを軽減するチャンスがある。状況が異なると(約3%のGDP成長)、失業者数は増加し、320万人に達すると予測できる(国家戦略、2000年)。

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