生活水準7年間で大きく向上
―社会指標調査結果

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

ブラジル地理統計院が4月に発表した「社会指標2000」によると、1992年から1999年の7年間のブラジル人の生活水準は大幅に向上した。その概要は下記の通り。

(1)1年未満の幼児の死亡率は1992年の4.43%から3.46%に低下した。これを実数にすると、1999年の1歳未満の幼児の死亡者数は11万1000人である。幼児死亡率の低下の原因は、家族計画の普及、母乳の授乳増加、最近4年間に9万から12万に増加した保健所の存在が大きい。

最近30年間にブラジルの幼児死亡率は65%も減っているが、汎米保健機構によると他の米州諸国に比しその率はまだまだ高率である。ちなみに、キューバは0.46%,アメリカ合衆国は0.64%,チリ1.0%、アルゼンチンは1.84%であって、ブラジルはエルサルバドル、ホンジュラスと同水準にある。

(2)全人口に対する就業人口は両年とも約44%を維持しているが、社会保険の恩恵を受ける労働手帳を所持している労働者の率は64%から62%へと減少している。この面でも地域格差は大きく労働手帳の所持者が最大のサンタカリーナ州は77.1%であるのに対して、、最近のトカンチンス州では26.4%である。

(3)労働者1人当たりの平均賃金(月額)は、1992年の402,45レアルが1999年の525,10レアルへとこの間に30%増加している。

(4)しかし所得分配の改善は未だしで、就業人口の上部10%の平均所得は最下部40%の所得の実に19倍となっている。IBGE総裁のセルジオ・ベッセルマンは「貧富の格差の解消は、貧困そのものの撲滅より困難である」と語っている。(最貧困層40%の月額所得は、1992年の95,38レアルへ〔最低賃金の0.7倍〕から1997年の127,27レアル〔最低賃金の0.98倍〕、また上部10%の層の月額所得は、1.812,35レアルが2.397,07〔最低賃金の18.44倍〕となっている。)

(5)ブラジルの人種構成は白人54%,黒人5.4%,混血39.9%,黄色人種及びインジオ0.6%であるが、所得の人種軟差はまだ大きく、1999年において白人の平均所得が最低賃金の5.25倍であるのに対して黒人の平均は2.43倍である。

地域軟差も依然として大きく、1999年のブラジル後進地帯東北部の平均所得は314,70レアルであるが、先進地域である南東地域は約2倍の631,20レアルである。

(6)15歳以上の文盲率は、1992年の17.2%から1999年の13.0%に低下した。それでも実数にするとブラジルには1500万人の文盲が存在している。

就学率は次第に向上して、7歳から14歳の層の就学率は、1992年の86.6%から1999年には95.7%で、国際連合が設定する許容する許容率96%をほぼ達成した。しかし、この面でも人種的格差は大きく、文盲率は白人8.3%,黒人21%,混血19.6%、学校教育10年以上を受けた者(日本の中卒程度プラス2年)の率は、国民全部で5.8%,白人が6.7%,黒人が4.5%となっている。

(7)最近7年間での暗い面は失業率の増加で、6大首都圏の失業者は1992年1月から1999年度同月の間に4.9%から7.7%に増加した。これに反して10歳から14歳の児童労働者の率は、22.4%から16.6%に減少した。これは就学期間の伸長と労働市場の高学歴がもたらしたものであると見られている。

総じて、ブラジルで最近7年間社会面で著しい向上を見たものは教育であり、着実に改善をみているものは所得、幼児死亡率、年少者労働、依然としての問題なのは地域的及び人種的較差ということになる。

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