労使関係委員会、アワード最低賃金の引き上げを決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

オーストラリア労使関係委員会(AIRC)は、オーストラリア労働組合評議会(ACTU)の申請を受けてアワード適用労働者の最低賃金引き上げを審理してきたが、2001年5月2日に同申請に関する決定を下した。

決定の内容

AIRCは最低賃金を一律に引き上げるのではなく、今回は3つに分けてアワード賃金の引き上げを決定した。すなわち、①週アワード賃金が490.00豪ドル以下の場合は、13豪ドルの引き上げ、②週アワード賃金が490.00豪ドル超、590.00豪ドル以下の場合は、15豪ドルの引き上げ、③週アワード賃金が590.00豪ドル超の場合には、17豪ドルの引き上げ、が認められた。

これにより、連邦最低賃金は13豪ドル上昇し、週あたり413.4豪ドルとなる。今回の引き上げ決定は、およそ180万人の労働者に影響を及ぼすものと考えられている。

AIRCは、最賃引き上げ決定が賃金体系のゆがみや上位のアワード適用労働者に不公正な状況をもたらしていないかを検討し、結果的に賃金の高いアワード適用労働者ほど賃上げ幅が大きい以上のような決定を下したのである。

決定に対する評価

ACTUは低賃金労働者に対する28豪ドルの賃上げ等を求めていたため、AIRCのこの決定には失望感をあらわにしている。ACTUのバロウ議長は、税金やインフレ率等を勘案すると、低賃金労働者に対する13豪ドルの賃上げ幅は不十分であると主張している。

これに対し、政府や使用者団体は8豪ドルから10豪ドルの賃上げを支持していた。アボット雇用職場関係小規模事業省長官は、今回の決定にあたりAIRCが責任を持って行動したと評価した。他方、使用者団体であるオーストラリア商業産業連盟(ACCI)は、最賃引き上げ決定が低賃金労働者のみでなくすべてのアワード労働者を対象としていることに失望感を示し、小規模な小売業者が特に打撃を受けるのではないかとの懸念を表明した。AIRCは経済状況の悪化も考慮して今回の決定を下しており、こうした点についてはACCIも一定の評価を行っている。

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