民間職業紹介に関する規制の改正

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

最近の財政法(2000年12月23日法律388号)により、職業紹介業を営む民間業者、すなわち、求人および求職に関する仲介を行い契約締結を取り持つ(契約の当事者ではない)民間主体に ついて、いくつかの重要な新制度が導入された。

民間主体による職業紹介業は、1997年12月23日委任立法469号により認められたものである。この結果、公的機関以外の主体による職業紹介を禁じていた従来の制度は改正されることになった。しかし、職業紹介に関する規制がかなり複雑だったために、民間の職業紹介に関する市場は、必ずしもうまく機能していなかった。

民間仲介業に関する規制が、このように基本的には不成功に終わったことを考慮して、立法 者は新たな措置を講じた。ただし、この法律の改正自体は、民間仲介業に関する規制の透明性や統一性を高めることができるものとはいえない。

財政法以前の規制

1997年委任立法469号により、公的機関による職業紹介の独占に終止符が打たれ、民間の主体も仲介業を営むことができるようになった。ただし、公的機関による監督や統制の観点から、当該民間主体には、資格を有し一定の要件を満たしていることが要求されている。より具体的にいうと、1997年委任立法469号10条2項は、「求人および求職に関する仲介業は、予め労働社会保障省の許可証を得た上、2億リラ以上の資本金を有する企業、企業グループおよび協同組合、並びに、2億リラ以上の資産を有する非営利機関により遂行することができる」としている。ただし、同条3項によれば、上記の主体は、「求人および求職に関する仲介業を、唯 一の団体の目的として行う」必要があるとされている。

したがって、有料であれ無料であれ、求人および求職に関する仲介業を営もうとする主体はすべて、労働社会保障省により交付された所定の許可証を取得しなければならないのである。

本法は、「求人および求職に関する仲介」が何を意味するかについて具体的に規定していたわけではない。しかしながら、その文言は、求人と求職とを取り持つ活動のすべて(無料で、あるいは、仲介業の利用者と連携してこうした活動を行うものを含む)を仲介の概念の中に含めることになってしまった。

したがって、人材の発掘・選考を行う業者や、自己の会員のために求人・ 求職情報の収集を専門に行う協会やグループもまた、許可証取得義務を免れることはできなかったのである。つまり、正規の業として、労働者や使用者の委託を受け適当な人材の発掘や選考をしたり、渡航者や外国人に対する職業紹介を行ったりする主体はすべて、許可証を取得することが必要であった。また、労働社会保障省においても、多少の変動はあったが、最近ではこのような解釈を採る立場に落ち着いていたのである。

1999年12月24日通達83号の中では、許可証を所有していない主体が求人・求職の仲介業を行うことができないことを再確認した上、「仲介業は、労働者に関するデータベースの管理、労働者の発掘および選考を行う活動と不可分である」と明示していた。実際、労働社会保障省によれば、 現行法の規制を考慮した場合、人材のデータベース管理や人材発掘・選考のほか、求人・求職を取り持つ手段となるすべての活動は、「それぞれが不可分に結びついており、そのすべてが唯一 の団体目的と直接の関連性を有しているために、許可を得た主体により遂行される必要がある」ということになっていたのである。

労働社会保障省の通達においてこうした考え方が示されたのは、職業紹介を行う民間業者が自己の活動を第三者に委ねてはならないことを明らかにするためであった。しかし、これにより、データベースの管理など、人材の発掘・選考に関する活動は、「求人および求職に関する仲介」 の概念と完全に結びつくことになってしまった。この結果、人材発掘・選考やコンサルタントを行う業者が、1997年委任立法469号10条にいう労働社会保障省の交付した許可証を所有せずに仲介業を行うことは禁止されることになったのである。

2001年財政法により導入された新制度

これまで述べたように、1997年委任立法469号が民間仲介の定義を定めていなかったために、求人および求職を取り持つ手段となるあらゆる活動が、暗黙のうちに仲介の概念に含まれることになった。このため結果的に、前記のように、活動の内容に応じて、それを遂行する主体に要求される要件を区別するということもなされなかったのである。

2001年の財政法(2000年12月23日法律388号)は、1997年委任立法469号10条を改正した上、「求人および求職に関する仲介」を新たに2つに分けて、「人材の発掘および選考」活動を目的とする主体と「再就職に対する支援」活動を目的とする主体を規定している。

既存の仲介業をこうした2つの新たな形態に分けるために、本法は、次の3つの用語の意義について説明している。

a)「求人および求職に関する仲介」とは、障害者や社会的弱者層の労働への参加支援をも含めた上、 次の活動を指すものとする。

  • 潜在的な労働者に関する経歴の収集、関連するデータベースの作成
  • 労働者に対する職業指導
  • 労働者の発掘・選考
  • 求人・求職のマッチングの促進・管理(復職に関するものを含む)
  • 当該仲介団体の活動により実現された採用に関連するもので、企業の要請に基づく事務連絡の実施のすべて
  • 公的機関との協定による、雇用に関する活動・サービスの管理(これを行うことで、優先的に仲介許可証が付与される)

b)「人材の発掘および選考」とは、専門的助言に関する特別な委任を顧客である使用者から受けた場合に、この委任に基づき実施される活動で、目的に適した手段を整えバックアップを行うことにより、顧客である使用者との間で合意された方法を用いて、職業的観点から候補者を捜したり、選択したり、あるいは評価したりする活動を指すものとする。

c)「再就職に対する支援」とは、顧客である使用者からの特別な依頼を受けて実施される活動、あるいは使用者の代理人として理事会の承認に基づき実施される活動で、新たな活動を始める際の事前準備や付き添い等を行うことにより、個々の労働者や一定の労働者集団の市場への復帰を容易にすることを目的とする活動を指すものとする。

以上の区別は、単に名称上のものにとどまらない。なぜならば、属するカテゴリーが異なれば、労働社会保障省によるリストの登録が別になるだけでなく、当該活動を行う主体に課される要件も 異なるためである。

とくに、仲介を行う企業に求められる資本は2億リラ(100リラ=5.35円)であるのに対し、人材の発掘・選考や再就職に対する支援を行う企業については、5000万リラの資本しか要求されない。

主体の面でのさらなる区分に関しては、本財政法の施行日から60日以内に公布される労働社会保障省令によって具体化されることになろう。

問題点

求人・求職の仲介市場に対する民間人の参入を容易にするために、民間職業紹介に関する規制 を改正することは、多くの人々により切望されてきた。

1997年委任立法469号により、公的機関以外にも求人および求職の仲介は解放されたが、実際は、仲介業に関する(正規の)市場が確立されることはなかった。つまり、現在のところ、労働社会保障省の許可証の申請を行った民間企業は、10にも満たないのである。

こうした状況に関しては、人材発掘・選考、コンサルタント、職業訓練など名称も様々なきわ めて多くの企業によりいまだに強く支配されている市場においては、求人・求職仲介を行う資格の手続をとっても、現実には利益がないためと説明されている。つまり、1997年以前の罰則はほ とんど機能していなかったために、これ以前にも、民間の職業紹介は事実上存在していた。そして、これまで不法に求人・求職を仲介してきた主体は、職業紹介に対する立法措置により姿を消 したわけではなく、行政の許可証をもつ主体に対し(不法かつ)不公平な競争を強いることにより、1997年委任立法469号10条の規定を実際上麻痺させていた。

立法による介入は、仲介業市場を新たな民間主体に開放する障害となっていたこのようなしがらみを取り除くものとして待望されていた。とくに、仲介事業のみを団体の目的とすべきとする義務(こうした義務は、他のヨーロッパ諸国の法制度ではほとんど見受けられない)を撤廃する ことが期待されていた。

しかし、以上の点はまったく実現されなかった。立法者は、統一的な簡便かつ簡潔な法規制を目指していたにもかかわらず、実際は形式的な調整による介入を行ったのみであり、許可手続をいっそう複雑なものにしたにすぎなかったのである。

本法の解説者の中には、財政法により労働力の仲介に関する規制を改正しようとすること自体が重大な誤りであるいう者もある。実際、この財政法では、財政面以外の事項に関する法律の条文に新たな条文を挿入するという形で矢継ぎ早に重要な法改正を行っており、これは、事実上、法的安定性を損なうことになる。その結果、解釈上の困難が生じ、裁判に至るものを含め紛争が著しく増大することになるのである。

法改正の具体的問題点に戻ると、多くの混乱の原因は、とくに、人材の選考や再就職に関する活動から仲介業を区別することに由来していると考えられる。実際、1996年11月28日法律608号(社会的有用労働等に関する規定)により、原則として、仲介を通さずに労働者を直接採用する ことも許容されていると考えるべきである。このように一定の労働活動のための雇い入れを視野に入れて人材発掘や選考、職業訓練が行われている場合には、人材発掘や職業訓練を行う団体が 仲介業的な活動も行っているのか、あるいは逆に、労働活動の直接採用が行われているのかを判断することは、不可能ではないにしてもかなり困難ということになろう。

求人・求職の仲介を行う企業とは異なる別のカテゴリーの法主体を設定するよりも、許可証取 得に関する手続を簡素化し、当該活動の遂行に関する要件を緩和する方がより望ましかったのではないかと思われる。すでに指摘したように、基本的な方向性は、仲介業のみをその主体の事業 目的とすることを廃止し、求人・求職の仲介業が純然たる企業組織をもつ主体により遂行されることを保障するにとどめる、というものであるべきだった。

最後に、次の点を明らかにしておくべきだろう。すなわち、新法では、仲介・選考・再就職に 関して許可を受ける様々な主体が、どのような法形態であるべきかについて明確にされていない。

労働者派遣に関しては、1997年法律196号が「資本会社あるいは協同組合」でなければならないと明示しているのに対し、単に仲介業のみを行う場合には、1997年委任立法469号は「企業、企業グループおよび協同組合」と述べ、個人企業も含まれるとする解釈の余地を残している。

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