エンジニアリング産業で38カ月協約締結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年5月

2001年2月8日、エンジニアリング部門の両当事者は、1週遅れではあったが調停に委ねることなく、最終的に、スウェーデン労働市場のパターンとなった38カ月協約の調印にこぎつけた。この協約は、38万人の従業員を対象とする。前回の鉄鋼、化学および製紙業界の協約は、工業部門労使交渉協定により定められた時間枠内で合意に達したが、ブルーカラーのみが対象で、ホワイトカラー労働者は含まれていなかった。しかし、エンジニアリング産業では、3つの組合すべて、即ちブルーカラーの金属労働者労働組合、技術および事務系ホワイトカラーの組合である事務技術系職員労働組合(SIF)、および土木技術専門職組合である大卒技術者協会(CF)が単一のチームとして、使用者であるエンジニアリング産業経営者団体連盟(VI)と交渉を続けてきた。ただし、交渉は予定どおりにはいかなかった。ホワイトカラー労働者の協約合意には、交渉期間の延長が必要であった。

2001年~2004年のエンジニアリング産業協約の内容

エンジニアリング産業において、金属産業(エンジニアリング、自動車、造船等)の3金属労働者労働組合、SIF、およびCF、とVI(エンジニアリング産業経営者団体連盟)との間に2月8日に調印された新しい協約の期間は、2001年2月1日から2004年3月31日である。

金属労働者の協約

ブルーカラー労組である金属労働者労組の組合員への賃金原資の分配は、各工場ごとで行われる3度の支部交渉においてなされる。そこでの平均賃上げ率は、2001年2月に2.3%、2002年2月に2.0%、2003年3月に1.7%である(計6%、さらに協約期間中、賃金ドリフトで1%の上積みが保証され、合計7%の賃上げとなる)。2002年4月までに、少なくとも475クローネの賃上げがなかった金属労働者には、この額の増額が行われる。その次の賃金見直しは2003年5月に予定されており、最低増額は225クローネに設定されている(計700クローネ)。つまりこの38カ月協約の期間内に、個々の労働者に対して4%の賃金増額が保証されているのである。

4つの賃金グループ(おおよその職業評価システムに基づく)の中で最も低いグループの最低協約賃金は、現在、時給で65.04クローネ、あるいは月給で1万1300クローネである。この最低協約賃金は、2001年に3.5%増額され、以後毎年さらに3%ずつ増額される。2004年には、この額が1万2400クローネとなろう。この最低協約賃金が該当するのは金属労働者のうち1万人にすぎない。平均時給は1時間当たり100クローネを超えている。

休暇中の給与は3年の間に12.5%増額される。これは、実質的に連帯的賃金政策に向けて一歩を踏み出したものと考えられる。現在はホワイトカラー労働者にのみ与えられている、就職した年に丸5週間の休暇を取る権利が、将来的には金属労働者にも与えられると考えられるからである。

ブルーカラー労働者は、要求より低い賃上げを受け入れなければならなかったが、使用者が労働時間を弾力的に設定する権利を強化することを拒んだ。組合の指導者らは1998年の交渉で年間労働時間を3日間短縮することを受け入れた後、組合員から、労働時間の予定作成に関し、使用者が労働時間を設定する権利について、過度に譲歩したと厳しく批判されたからである。

弾力的な勤務時間に基づいて働き、超過勤務時間が生じた場合、その時間は、「労働時間銀行」の口座に投資される。年末に100時間を超える労働時間が銀行に蓄えられている場合は、当該労働者が希望すればそれを年金保険に払い込むことができる。

労働時間は今後3年間に毎年1日分短縮される。短縮された時間に対する報酬は全額支払われるので、使用者にとっては3年間で1.5%のコスト増となる。政府が、現在の労働時間委員会の報告に従って、労働時間の短縮が法によって定められた場合、協約による時短に加え、時短がさらに一層進むことになる。

ホワイトカラー労働者には、低めの賃上げ

金属労働者労働組合は、業界のホワイトカラー労働者組合であるSIFおよび土木技術専門家組合であるCFと共同で交渉を進めた。後者2組合のそれぞれの平均賃上げ率は、3年間にそれぞれ2.1%、1.8%および1.6%で合計5.5%になった。即ち、ブルーカラー労働者が勝ち取った率より1.5%低い。この1.5%の差は、ブルーカラー労働者よりも、ホワイトカラーおよび専門職労働者が、より高い賃金ドリフトを期待できることを反映している。ブルーカラー労働者の協約と同様、SIF協約は新しい協約の38カ月の期間内に個々の組合員に最低700クローネの賃上げを保証している。

ホワイトカラーおよび専門職労働者は、ブルーカラー労働者と同様に有給の労働時間短縮を得る。使用者側が、労働時間をさらに弾力的に設定する権利を要求し、通常の労働時間を計算する際に用いる期間を現在の4週間単位ではなく6週間単位で計算されるべきである、と主張したため、ホワイトカラーの交渉中に1週間の「タイムアウト(中断)」を引き起こした。結局は、この問題の解決は支部交渉に任せることになった。

使用者団体であるエンジニアリング産業経営者団体連盟(VI)は、交渉の結果、平穏な労使関係を維持できたことに満足している。また、最も小幅の賃上げが経済の減速が予測される2年目および3年目に設定されているため、それらの年の賃金ドリフトが高くなることはないだろうと安心している。自動車およびエレクトロニクス産業はすでにレイオフを発表して、景気減速に備えている。

賃金ドリフト

スウェーデン統計局の統計に基づき、政府の経済研究所であるKonjunkturinstitutetが算出したところによれば、団体交渉外の金属労働者の賃上げ、即ち賃金ドリフトは、前回の1998年から2001年1月の協約期間では2.4%であった。この期間の協約の下で、賃上げは合計8.5%であった。業界のホワイトカラーおよび専門労働者にはかなり高い賃金ドリフトがあった。既に指摘したように、この経験から、ホワイトカラーおよび専門職労働者は、ブルーカラー労働者より低い協約賃金増額を受け入れた。ここ数年は、協約賃金増額と賃金ドリフトとの区別がより難しくなった。というのも、いくつかの協約は保証賃金ドリフトを含むが、ほとんどのホワイトカラーの契約は賃金ドリフトの見込みに言及しないからである。さらに、全国協約の第3カテゴリーとして、可能性のある賃上げの具体的な数字には一切言及せず、両当事者が従わなければならない交渉日程の予定だけを作成している協約がある。

1998年、そして今年もまた、組合にとって非常に低い名目賃上げの協約に調印することが可能であった。なぜなら、インフレ率が非常に低かったので名目賃上げは、ほとんどすべて実質賃上げになったからである。

工業部門の新協約に対し、批判を加えているのは、国立銀行であるRiksbankenの経済アドバイザーだけである。そのアドバイザーは、賃金が最も低いブルーカラー労働者に対する保証増額が(たとえ、それが3年間でわずか4%だとしても)、同様に低賃金の地方自治体、小売り取引およびホテルとレストラン従業員の賃金増を底上げし、インフレ圧力を創り出すと懸念している。これらの低賃金グループの賃金は、工業部門労働者の平均賃金と比較すると、過去10年から15年の間、相対的に下がり続けてきた。今日、彼らは工業部門に歩調を合わせるために年率4%の賃上げを要求している。むろん、彼らが追いつくためには、さらに高い賃上げ率が必要とされる。しかしそのような展開は、ほとんどの地方自治体の財政状況を考慮すると非現実的である。

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