賃金の購買力が低下
国立統計庁(INE)の発表によると、スペインの労働者の平均賃金(農業部門を除く)は、2000年第3四半期に2.4%上昇している。しかし、9月末の時点でインフレ率は3.7%となっており、したがって購買力は年間で1.3%と、過去5年で最大の低下を記録したことになる。
このような賃金の実質購買力低下を説明する要因は2つである。まず、労組側が過去10年間を通して、賃金の抑制が経済全般、特に労働市場の機能にとって重要であるとの意識を持つようになったことがあげられる。購買力の低下が最近数カ月間に顕著になりつつあるにもかかわらず、インフレ率並みの賃金上昇を求める労組の声はさほど強まっていない。とはいえ、インフレと賃金の格差が今後さらに開くようなことがあれば、労組の穏健姿勢が変わらないとも言えない。たとえば、カタルーニャ地方の企業30万社が加入しているバルセロナ商工会議所は、会頭が各企業に対し3.5%の賃金上昇率を受け容れるよう提言した。他方、過去10年間におけるスペインの雇用成長が低熟練・低賃金労働者の層に集中していることも、平均賃金の低下に影響している。
2000年第3四半期を経た時点でのスペイン人労働者(農業部門を除く)の平均賃金は、月額で23万ペセタ強(約1400ユーロ)にのぼる。国立統計庁の賃金アンケートによると、賃金が最も高いのは工業部門で平均25万ペセタをこえ、99年第3四半期に対し2.9%上昇している。一方、上昇率が最も高かったのは建設部門で、3.4%となっている。それでも建設部門の賃金は相変わらず低く、平均で20万ペセタを下回っている。ここ数カ月間の建設業の雇用創出もスピードダウンを始め、それが賃金にも響いているものと見られる。
賃金労働者の3分の2が集中するサービス部門では、平均賃金は25万ペセタをやや上回り、前年同期比で3%上昇となっている。サービス部門ではホワイトカラーとブルーカラーとの賃金上昇率の差が大きく目立ち、ブルーカラーの場合が5.8%に達したのに対し、ホワイトカラーでは2.8%にとどまっている。もっともこれは他の部門にも共通して見られる現象であり、全般にブルーカラーの賃金上昇率はホワイトカラーよりも1ポイント高くなっている。
スペイン北部のバスク地方は工業への特化が際立ち、また歴史的に労組が非常に力を持つ地方であるが、平均賃金は28万8000ペセタと全国最高である。これに続くのがアストゥリアスの25万4000ペセタ、マドリッドの23万3000ペセタなどとなっている。逆に平均賃金が最も低いのは南部のムルシア地方で18万4000ペセタ、同じく南部のエストゥレマドゥラとカスティーリャ・ラ・マンチャが19万2000ペセタと続く。賃金の地方格差は、スペイン労働市場の特徴の一つでもある。
一方、2000年第3四半期において前年同期に対する賃金上昇率が最も高かった自治州は、平均賃金が最低のムルシアであった。しかし、マドリッドやバスクも平均を上回る伸びを示している。賃金水準が低い自治州は、一般的に上昇率も平均を下回っている。
2001年4月 スペインの記事一覧
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