たばこ産業労働者、グローバリゼーションに反対

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年4月

第8回全インドたばこ労働者組合総会は、2001年1月21日、「資本主義国家のグローバリゼーションの猛攻に対して団結して戦う」を総会結語として終了した。この総会は、全インド労組会議(AITUC)の支援により組織された、220の代表者出席のもとで開催された。

総会は、たばこ産業が直面している厳しいグローバリゼーションの現状を訴え、この産業に直接生活を依存している750万家庭への支援を政府に求めた。

総会決議を強調するために、全インドの組合員を動員した抗議活動を、2001年2月15日に実施する。

総会は、米国が計画しているインドからのたばこ原材料の輸入禁止を阻止し、また、たばこ産業に対する海外からの直接投資を停止するよう中央政府に圧力をかけることを決議した。加えて、総会は、たばこ生産に従事する労働者が、この産業で生き残るよう協力して闘うため労働組合が団結することも宣言した。また、総会は、中央政府が「公共の場での禁煙」を停止すべきだと決議した。これには、次のような産業的背景がある。

近年、たばこ産業は、生産過剰、消費の停滞、輸出の減少、価格の低迷によって大きな影響を受けてきた。中央・地方の政策立案者は、たばこ市場の需給関係を調整できなかった。

たばこは、インドの多くの農家にとって有利な商品作物である。このため他の作物が生産できるところでさえ、転作することに大きな抵抗があった。調査によると、地域によっては他の穀物、野菜、綿花を栽培することは可能である。しかし、政府は、農家がたばこ から他の作物に切り替えるよう適切な指導をしなかった。

また、たばこは商業的に重要な商品で、財政に十分寄与してきた。たばこ消費税による歳入は、1999年度で741億6000万ルピー(1ルピー=2.64円)にもなり、たばこの原材料と製品の輸出額は105億ルピーに達した。

中央政府と州政府は、たばこ産業に対する十分な指導を躊躇し、需給のグローバリゼー ションによる影響と市場環境の急激な変化に対し、たばこ農家が対応できるよう準備するのに失敗した。

その結果、たばこ産業で雇用されている労働者は、現在不安定な経済状態に陥っている。

インド国内ではたばこの需要は増加しているが、世界的な禁煙運動は急速に進展しており、先進国でのたばこ消費量は急速に低下し、残された主要な市場は、発展途上国にあるというのは誰もが認めるところである。しかし、発展途上国の経済状態は非常に不安定で あるため、今後さらなる需給関係の悪化が予想される。

市場関係者は、中央政府が全世界と国内の市場環境に対し広範囲に市場調査をし、生産量、輸出市場、国内消費、価格に関して適切な政策を立案し、政治的介入のない市場を成立させ、厳しく監視することがたばこ経済の将来を支えると見ている。たばこ農家に対しても転作を強力に進める必要がある。州政府は、転作候補地と転作作物を指定することによって生産量を調整する役割を演じなければならないし、労組も、行政と協力し、市場環 境を考慮した労働関係を形成する必要があると見ている。

地域的に見てみると、アンドラプラッデシュ州は、特に、たばこの生産問題が生じている。幾人かのたばこ農家が、たばこ栽培を1年間休止せよという裁判所命令を無視したからである。法的に休耕を強いられている農家が、州のたばこ委員会によって管理されるは ずだった約3000エーカーの土地に栽培を要求した。同委員会は、この政治的に敏感な問題に着手するだけの政治的権力を委託されていないし、解決するための資金も所有していないため難局に陥っている。

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