韓国通信公社での構造調整をめぐる労使紛争

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年3月

韓国通信公社労使は12月22日、「早期希望退職者募集による人員削減、各種事業のアウトソーシングによる構造調整、同公社の分割民営化を促進する電気通信事業法の改正など」の争点をめぐって最終合意に達し、18日午前から続いていた労使紛争は5日ぶりに終結を迎えた。

まず、早期希望退職者募集による人員削減をめぐって、労組側は「会社は経済危機後約3年間約1万2000人余りを早期希望退職制度で削減したのに続いて、再び3000人規模の人員削減を目標に早期希望退職者の募集を行い、申請者数が目標値を大きく下回ったことを理由にさらに募集期間を延長するなど、構造調整に伴う人員削減を強行する」動きに強く反発し、「早期希望退職者の一方的な募集計画および募集期間延長措置を撤回する」よう求めた。また早期希望退職者のための慰労金づくりの名目で会社によって半ば強制されている募金活動や、社内結婚した夫婦社員を対象に女性社員の退職をむやみに迫ること、余剰人員(正社員)に対して本部待機辞令を出すことができる人材プール制度などを取りやめるよう求めた。これに対して、会社側は「構造調整に伴う人員削減は避けられないという立場から、早期希望退職者の募集を続けているが、その過程で慰労金づくりのための自発的な募金活動が行われた」と釈明した。

第2に、事業のアウトソーシングや分割民営化決定における労組の参加をめぐって、労組側は「労組との合意」を義務づけることを求めたのに対して、会社側は「労組との協議」にとどめる方針を堅持した。

同労組は12月6日、争議行為に対する組合員投票(61.2%賛成)を実施し、17日にはソウル駅広場で臨時組合員総会(組合員3万8000人のうち、約4000人参加)を開いた後、明洞聖堂に立てこもり、18日午前からストライキに突入した。

同労組の争議行為を後押しするように、民主労総など43の労働団体および市民団体の連帯機構である「国家基幹産業の民営化および外国企業への売却反対汎国民対策委員会」は12月19日、明洞聖堂で記者会見を開いて韓国通信公社の構造調整および民営化・外国企業への売却決定などを撤回するよう求め、同労組との連帯闘争を展開することを明らかにした。

会社側は労組側の以上のような要求や、それを貫徹させるための争議行為に対して、「分割民営化問題は経営権に関わる事項であり、労使交渉の対象にはなりえない。韓国通信公社は労働関係法上必須公益事業所と指定されているので、労組は争議行為に入る前に中央労働委員会の職権仲裁の手続きを踏まなければならないが、今回のストライキはこのような手続きを経ていないため、違法ストに当たる」との立場を貫いた。そのうえ、出社せず、違法ストに参加した社員に職務復帰命令を出して、これに応じない者に対しては内規に基づいて懲戒処分を行い、ストを主導した者に対しては民事・刑事上の責任を問うための告訴・告発の手続きに入るなど強硬な姿勢を見せた。

しかし、ストライキ期間中も労使交渉は続けられ、12月20日には次のような6つの項目について合意に達したかにみえたが、最後のところで電話番号案内、電話線維持保守、コールセンター、電話架設業務の4部署の分社化案をめぐって合意が得られず、労使交渉は振り出しに戻ってしまった。

これと時を同じくして金融界では構造調整をめぐる労使紛争が再発したこともあって、同公社においても労使紛争の長期化が懸念された。その一方で、労組側は違法ストに対する会社側の強硬な対処に負担を感じるようになったようである。

結局、労使は12月22日に次のような内容で最終合意に達した。第1に、早期希望退職募集をめぐって、申請者数が18日現在1100人で目標値3000人を大きく下回ったが、募集期間延長によるさらなる人員削減は実施しない。第2に、余剰人員を対象にした人材プール制度は全面撤回する。第3に、民営化案は労使共同参加の特別委員会を設置して処理する。第4に、事業の分割・分社化の際には構造調特別員会を設け、十分な協議を行う。第5に、報酬制度の改善は12月中に実施すること、などである。

その一方、12月13日から続いている韓国通信公社契約職労組のストは、2001年1月中旬現在、依然として終結のメドがたたない状況にある。会社は、11月から契約職社員が担当していた電話局の電話線維持保守と電話架設作業のアウトソーシングを推し進めており、その過程で契約職社員7000人との契約を解消した。同契約職労組は、契約解消の対象を当初の7000人から3000人に縮小するよう求めているのに対して、会社側は「契約期間を3カ月間とする」方針を貫いているため、労使交渉は難航しているようである。そのうえ、契約期間が満了する2000年末までに会社側が契約更新に応じなかったため、契約職社員はスト期間中自動的に解雇されることになったようである。

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