金融界の構造調整をめぐる労使紛争と政府の強硬策

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年3月

国民銀行労組と住宅銀行労組は、12月18日から「政府主導の強制的な銀行合併」に対する反対を掲げて、定時出退社や私服姿の勤務など順法闘争に入り、22日からは国民銀行の研修所に立てこもり、ストライキを続けた。その一方で、2000年7月のゼネストを機に産別労組としての団結力強化の道を模索し始めた金融労連も、12月28日にゼネストに突入すると宣言するなど、金融界では再び構造調整をめぐる労使紛争の動きが目立った。

まず、両銀行労組や金融労連は、「国民銀行と住宅銀行」という経営優良銀行の合併は、2000年7月のゼネストで勝ち取った「労政間の合意内容」に反するとして反発を強めた。つまり、両銀行の合併は「政府主導の強制的な合併は行わず、金融機関の組織および人員削減などに関しては労働協約を尊重する」との約束を破ることになるというのである。

これに対して、政府は「経営優良銀行の合併には直接介入しないという原則に変わりはないが、住宅銀行と国民銀行の大株主(各々第1および第2株主)として両銀行の合併は望ましいとの見解をもっている。」とともに、「両銀行の合併の際に一方的な人員削減や店舗の縮小などは行わず、余剰人員は自然減で処理するよう誘導する」方針を再三強調した。

12月22日から国民銀行の研修所に立てこもってストライキを続けていた両銀行労組は、クリスマスには組合員・家族集いのパーティを開くなど立てこもりの長期化に疲れた組合員のモラール向上を図りながら、28日に予定されていた金融労連主導のゼネストまで闘争力の温存に努める戦術をとった。

しかし、その前日の27日に、政府が警察を投入し、強制解散に踏み切ったところ、同研修所に立てこもっていた組合員らは、それを待っていたかのように何の抵抗もなく、解散に応じたようである。

このように両銀行労組のストライキがさしたる成果もないまま終わったのに続いて、金融労連主導のゼネスト計画もあえなく頓挫するなど、労働勢力の闘争力よりは構造調整に対する政府の強硬な姿勢が一層目立つ結果となった。

それに勢いがついたように、政府は、経営不良銀行に対して公的資金投入の条件として経営再生計画案に労組の同意書(代表交渉権を持つ金融労連委員長の署名が必要)を添付することを求めた。

これを受けて、平和銀行や光州銀行など経営不良銀行の労組は、手配中の金融労連委員長の署名がもらえないことを理由に、いかにも簡単に金融労連から脱退し、各個別銀行労組委員長の署名だけで法的効力をもつ労組同意書が提出できるような動きに出た。

これに続いて、ソウル銀行労組は組合員投票を行い、「99%(3103人中3072人)の賛成で金融労連からの脱退を決議した」という確認書を預金保険公社に提出した。またハンビッ銀行労組は、金融労連における同労組の地位を考慮し、脱退ではなく、金融労連非常時対策委員会の署名(委員長から全権を委任された5人中3人以上の署名で労組同意書は法的効力をもつという)をもらう道を選んだようである。

さらに、政府は、公的資金投入済みの金融機関に対する管理を強化するために、次のような内容を盛り込んだ「公的資金管理特別法施行令」を立案し、2月から施行することを明らかにした。第1に、同金融機関による融資額が500億ウオン(100ウオン=9.43円)以上の企業や、融資額が100億ウオン以上の和議・会社更生法適用・ワークアウト中の経営不良企業に新規融資を行う際は、必ず当該企業と構造調整に関する契約(労組など利害関係者の同意書添付)を締結しなければならない。

第2に、経営不良金融機関の清算または破産措置が公的資金の投入費用を最小限に抑える道だとしても、国家経済にもたらす損失が大きい場合は、合併、増資などの次善策を選択することができる。

第3に、これに伴い公的資金を投入する際は、減資、役職員の職務停止、解任などにより、損失負担と経営責任の原則を明確にすることなどである。

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