ポーランド/雇用差別の性質と形態-性、年齢、家庭責任

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

労働市場における不平等問題は、二重の性質を持っている。すなわち、1.有効な立法により定められた法的意味における不平等、あるいは2.実証が困難であり、使用者による慣行の結果である(客観的であれ主観的であれ)実践的意味における不平等である。

雇用分野における法的不平等の例としては、育児・医療休暇制度上の男女間の不平等があった。この権利は女性従業員に限定されていたが、1995年の法律改正により、男性に対する差別は解消された。法的不平等の別の例には、男女で異なる定年を設定した法規定がある(女性は定年が早く、差別されている。すなわち、女性の定年は60歳であるのに対して、男性は65歳となっている)。

差別は、性、年齢、あるいは、育児を始めとする家庭責任などによる。

性に関連する差別には、以下が含まれる。

  1. 特定の職業を始めとする雇用機会へのアクセス。
  2. 男女同一賃金への権利、および育児をしなければならない母親、育児休暇、父母医療休暇に関する平等待遇の権利を含む雇用の分野。
  3. 男女の定年の差異と並んで、従業員の解雇および男女の退職、そして男女間の定年の違いとその結果(女性は勤務年数が短いため退職手当が少なくなる)。

雇用機会に対する性による差別は、男性が担う役割と女性が担う役割とに典型的に分けることに示されている。その結果、使用者は、男性のために確保すべきだと思われている一定の職(たとえば、潜水夫)に女性を採用したがらない。

性による差別の現れは、求人広告にも見られ、使用者が採用したい従業員の性別情報が盛り込まれている。下位身分に関する立法は、求人に際して希望する性を表明することを禁止している。しかし、これによって、当該慣行を禁止することはできず、このような性による限定は、職業安定所を通じた職業紹介以外では依然として行われている。

年齢による差別は、雇用機会へのアクセスと定年に関して存在する。雇用サービスにおける求人には、例えば、30歳まで、40歳までの者というように応募者の年齢についての選択が含まれている。若年層への選好を禁止することは、自動的にそれらの者に対する差別、すなわち、高年層の優先を意味するので、この問題は、立法的手段で解決することは困難である。

年齢に基づく法的、並びに実践的差別の主な現れは、男女間の定年の違いである。過去2~3年間に、男女とも同一の定年導入を目指す試みがなされてきた。しかし、こうした試みは、女性集団から抵抗を受け批判された。立法府は、主に、提案されている解決法の社会的影響を提示することによって、男女同一定年制の導入意図を正当化した。女性の早期退職が、キャリアの発展の可能性を制限し、職業経歴を短くし、結果として女性の少ない退職手当につながるからである。

家庭責任並びに性に基づく、職場における別の法的差別の現れとして、育児休暇(parental leaves)の権利と育児・医療休暇(childcare medical leaves)の権利に関しての、子どもを持つ男性従業員(父親)に対する不平等な取り扱いがあった。女性従業員だけがこうした権利を持っていた。民権オンブズマンが出した声明が、1995年と96年の関連法規の改正に貢献した。1995年3月1日以来、父親母親ともに、病気の子どもの世話をするために、医療・育児休暇を取る権利を平等に持つこととなった。1996年6月以降、自分たちの選択に応じて、母親、父親のいずれでも、育児休暇が取れるようになった。

性に基づく職場での客観的差別の現れは、同じ地位で雇用され、同一作業を行っている男女間の賃金の不平等である。労働監督官が行った点検の結果、上級管理職(1998年で3%、99年で13%の差)だけでなく、労働者(1998年で18%、99年で14%の差)、もしくはサービス要員(1998年で17%、99年で21%の差)として雇われている場合でも、女性は平均して男性より賃金が低いことがわかっている。(注1)

女性は、昇進の機会が少なく、管理職のような従来から給料のよい上級専門職においては少数である。同時に、こうした地位は、より大きな責任と柔軟性を必要とする。

小企業を含む、民間部門の急速な発展状況における、まだ研究されていない現象は、職場での女性に対するセクシャル・ハラスメントの問題である。セクハラの事例を、調査や労働監督機関によって探知することは実際には困難である。ポーランドの立法では、この問題に関する規定は存在しない。すなわち、セクハラを定義し、もしくは、それに基づいて女性が申し立てることを可能とするような規定はない。

ポーランド労働法は、妊娠と出産の時期に特別の保護を与えている。女性に対する当該保護には主に次のものが含まれる。

  1. 妊娠中の労働者に禁じられている職種の一覧、および妊娠中の労働者を同一賃金で異なる職に配置転換する使用者の義務。
  2. 出産休暇の権利と出産前賃金の100%に相当する出産手当。
  3. 労働時間内の授乳休憩。

出産に関連する女性保護は、男性差別とはみなされていない。しかし、仕事を家庭責任、並びに育児と調和させることは、長年にわたり女性の問題であるとみなされてきた。ようやく1990年代半ばになって、子どもの世話をするための育児休暇や、病気の子どもの看護をするための育児・医療休暇について、父親母親両者に平等な権利を与えることでこの問題は解決された。

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