大韓航空パイロット労組、法的地位保障をめぐり労使紛争

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

大韓航空パイロット労組は、10月22日に「飛行手当」の引き上げや同労組の法的地位保障などをめぐる労使交渉が決裂したため、ストライキに突入していたが、その17時間後使用者側との交渉を再開し、労組側が要求していた99項目について最終合意に達し、ストを撤回した。その主な内容は、①パイロットの飛行手当を現行の1時間当たり2万4000ウオン(100ウオン=9.29円)から3万6000ウオンに引き上げる、②飛行手当の最低保証時間を現行の60時間から月75時間に増やす、③パイロットの勤務時間規定などを審議する社内運航規定審議委員会に労組の参加を保障する、ことなどである。

これにより、パイロットに対して飛行機の運航に関係なく最低限保証される飛行手当は、2001年4月から現行の144万ウオンから270万ウオンに87.5%引き上げられることになり、会社は年間200億ウオンの人件費を新たに負担することになった。このような合意内容は、ストの長期化を恐れた使用者側の大幅な譲歩によるものである。これに対して、既存の大韓航空労組(スチュワーデス・一般管理職・整備職などの組合員1万人余り)は「今回の労使交渉でパイロットの飛行手当は、一般管理職の課長代理の月給に近い150万ウオンも引き上げられた」と反発し、「経営陣の退陣を求めて闘争に入る」と宣言するなど、労労対立に発展しかねない状況にある。

もう一つの主な争点であった「パイロット労組の法的地位保障」をめぐっては、パイロ ット労組側が「既存の労組がソウル南部地方労働事務所(労働部所管)を相手に起こした労組設立申告書受理処分取消訴訟で既存の労組が勝訴してもパイロット労組の地位保障を盛り込んだ労働協約を履行するよう」求めたのに対して、使用者側は「それは裁判所の判断に委ねるべきであって、会社側が保障できるような案件ではない」と突き返し、交渉は難航していた。結局、労働部の仲裁案を受けて、労使は労働協約に「労働協約の不履行の際には担当者が民事および刑事上の責任を負う」という付則を付け加えることで最終合意に至ったのである。

11月7日にソウル行政裁判所は、前述の訴訟(5月に設立の許可が下りたパイロット労組に対して、複数労組に当たり現行法に反するので、同労組の設立許可を取り消すよう求めたもの)で「パイロット労組は複数労組と見なすことができない」とし、同労組設立許可取消の請求を却下した。

判決文によると、「それまでパイロットの団結や権益保護にさしたる貢献もしていなかった既存の労組が、パイロット労組の設立直前に労組の規約を改訂し、パイロットを既存の労組への加入対象に新たに加えたからといって、パイロットが実質的に既存の労組への加入対象になったとみるのは難しい。パイロット労組の実体が作られた1999年8月頃は既存の労組への加入対象からパイロットは外されていた点などからみて、パイロット労組は 複数労組とは見なせない」ということである。

これでパイロット労組の地位は法的にも保障されることになり、複数労組(現行法では 事業所別複数労組は2002年から合法化)とは見なされなかったとはいえ、いち早く1社2労組の労使関係の下で、新たな労使交渉方式の模索が始まったといえる。

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