労働者の仕事に対する満足度

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年1月

労働供給

2000年第2四半期におけるスペインの労働力人口は7万人余増加し、1680万人となった。これは過去5年間の第2四半期を比べた場合、最大の伸びである。男性の労働力人口の伸びは史上初めて10万人を超えた。

ただし、最も大きな変化が見られるのは前年同期との比較で、1999年第2四半期と比べ労働力人口はほとんど50万人近く増えている(+3%)。これは、好調なスペイン経済に支えられ雇用の期待感が高まる中、それまでは就職への期待感のなさから「働く気がない」としていた多くの人々が、この1年間で労働力人口として現れるようになったことによる。

労働力人口の増加分のほとんど3分の2は女性で、前年同期比4.5%の伸びを示している。他方、若年者よりも年配者層の伸びの方が大きい点が目につくが、これも雇用獲得をあきらめていた人々が再び労働市場に参入しようとしている傾向のあらわれと言える。

過去10年間で女性の労働力率は6%以上伸び、逆に男性の労働力率は3%近く低下しているが、それでも男性の労働力率は相変わらず女性のそれを大きく上回っている。スペインの場合、労働力率の男女差は欧州諸国の中でも大きい方に属する。

年齢別で見ると、第2四半期の労働力率の伸びが最も大きかったのは55歳を越える層で、この層では労働力率の低下が長期にわたって続いていたが、1999年以来増加傾向へと転じている。

若年者の労働力率は、20歳未満の層を除いて低下傾向にある。20歳未満では女性労働力率が21.3%から21.9%に増加、男性では27.4%から28.8%へ増加しており、性別による差が非常に少ない。

年齢要因とも関係するが、労働力率は最終学歴によっても非常に大きく変化する。正式な教育を全く受けていない層(年配者層に集中する)の労働力率は18.6%で、2000年第2四半期には1996年以来初めて増加している。ただしこの増加も大きな傾向となるわけでなく、むしろ一時的な例外的現象である。初等教育しか受けていない層の労働力率も歴史的に低下を続けていたが、第2四半期には増加が見られ、40%強となっている。中等教育を受けている層の労働力率は62.1%まで増えたが、そのうち女性が1%増となっているのに対し、男性では逆に低下している。中等教育以上の教育レベルでは労働力率は83.4%で3%増、そのほとんどが高学歴女性の市場参入によるものである。

自治州別に見ると、カナリアス州およびバレアレス州という島嶼部で相変わらず労働力率が最も高く、しかも過去1年間における伸びも大きい。続いてマドリッド州、ムルシア州、バレンシア州となっており、いずれも労働力率が53%を超えている。その逆がアストゥリアス、カンタブリア、カスティーリャ・イ・レオン、カスティーリャ・ラ・マンチャの各州で、48%未満である。

労働需要

2000年第2四半期の就業者数は1444万9500人で、第1四半期に対し1.7%、前年同期比ではほぼ5%近い増加を示した(絶対数では約50万人増)。雇用創出は年間ほぼ70万人に達しているが、1999年半ばまで続いた急増はその後見られなくなっている。

就業者数の伸びは、年齢でいうと、若年者と定年年齢に近い層の両極に集中している。後者は第1四半期に対して4%増となっている。これは、新たに提供される雇用の多くが熟練度の低いものであることとも関係する。

性別では、女性の就業者数が第1四半期に対して2.2%増えたのに対し、男性は1.4%の伸びにとどまった。

このような傾向は、労働市場に見られる大きな不均衡を是正する役を果たしている。女性の就業率は過去1年間で2ポイント近く伸び31.6%に達し、一方男性の就業率は1ポイント強上昇して57.4%となっている。

部門別では、農業部門で第1四半期に対し1.6%の雇用減が見られたのを除くと、その他の部門では1.6%(工業)~2.3%(建設)の伸びが見られた。建設部門は相変わらず最大の雇用創出源になっているが、最近になってやや勢いを失っている。

第2四半期のデータによると、民間の賃金労働者数は第1四半期に対して2.4%、前年同期に対して7%を超える伸びを示した。公共部門では1998年末以来増加傾向を続けており、1%増となっている。一方企業家・自営労働者は1.4%減少し、現在の好況局面が始まる1994年には賃金労働者は全労働者の73.5%だったが、2000年第2四半期には74.6%(絶対数で約200万人増)になっている。

これら賃金労働者のうち、第2四半期の有期雇用率は32.1%で、しかも労働市場への新規参入者にしめる有期雇用労働者の割合は52%と過去数年間で最高水準に達している。

パートタイム労働者は増加傾向にあるが、他の欧州諸国と比べるとまだまだわずかなものである。第2四半期のパートタイム労働者の増加は1万5000人強であった。また、新規参入者に占める割合は6%である。労働者全体に占めるパートタイム労働者の割合は8.3%で、過去最大を示した前年同期(8.6%)から低下している。政府・企業ともにパートタイムを雇用形態として奨励しているが、スペインの労働市場にはなかなかなじまないようである。またパートタイムで働く労働者も、最初から短い労働時間の仕事を求めていたわけでなく、単に終日労働の雇用が見つけられなかったためパートタイムで働いているという報告もある。

不均衡

2000年第2四半期における労働市場新規参入者は7万人に達しているものの、雇用が力強い伸びを続けているため、失業者数は17万5000人減り235万人を下回るレベルまで減少した。これは1980年代以来なかった低い数値である。しかし、年間失業者数減少はやや鈍りを見せている。前年同期に対する失業者数の減少は、1999年第2四半期には労働力調査の方法上の改正もあって50万人近くに達したが、2000年第2四半期は20万人強にとどまった。

失業者減の40%は25歳未満の若年者である。過去1年で見ると、若年者の失業者は、ほぼ10万人近く減り、63万人となっている。

性別で見ると、1994年には男性失業者の方が女性失業者よりも多かったが、現在では失業者10人中6人が女性である。このように男性失業者はもともと女性失業者よりも少ないうえ、第2四半期における失業者減の52.5%が男性であった。男性失業者は10万人減少し100万人未満となったが、これは1980年代初頭以来の低い値である。一方、女性失業者は、8万人減って1992年並みのレベルとなった。

1999年同期に対する失業者減が最も大きかったのは、主として失業する以前に何らかの雇用経験のない者から構成される「分類不可能な失業者」のグループで、91年以来はじめて100万人を割った。サービス部門の失業者減は、全失業者減の46%に達している。工業・建設部門での失業者減はわずかで、農業では逆に増加している。

第2四半期の労働力調査に基づく失業率は、9年ぶりに14%を下回り、1994年以来ほぼ10ポイントも下がっている。それでもスペインは、相変わらず欧州諸国の間で最高レベルの失業率に悩む国である。16歳~19歳の若年者では、失業率は1994年から20ポイント近くも低下しているといえ、いまだに3人に1人が失業中である。

女性の失業率は、前年同期比で2.5ポイント低下し20.4%となっている。一方、男性では0.9ポイント下がって9.6%である。いずれにしても、男女ともに過去20年以来初めての低い数値である。

部門別では、建設部門の高い失業率が下がりつづけているため、差が小さくなる傾向が見られる。最も失業率が高いのは農業部門で0.6ポイント上昇して17.6%、逆に工業は6.9%と最も低い失業率を維持している。建設部門は0.6ポイント下がって10.2%、サービス部門は1ポイント低下して8.3%となっている。

一方、スペインの長期失業は、欧州諸国平均を大きく上回っている。それでも第2四半期を通じて1年以上失業状態にある失業者の割合は0.3ポイント低下し、全失業者の48.2%になっている。1996年には長期失業者の割合が96%であったが、それ以来減少が続いている。女性の長期失業者は平均を5ポイントほど上回っており、逆に男性は5ポイント下回っている。第2四半期においては両者ともに0.4ポイント低下し、男性失業者に占める長期失業者の割合は41.6%、女性では52.7%となっている。

長期失業者の減少が大きかったのは若年層である。現在の好況局面の初期において若年失業者の2人に1人が1年以上の失業状態にあったのに対し、2000年第2四半期には35.8%まで低下している。これは若年者による労働市場参入が、条件のいかんにかかわらず大きく高まったことも関係する。ただし、若年者の長期失業者でも男女間の格差はあり、若年男性の失業者にしめる長期失業者の割合が31%であるのに対し、女性では39%となっている。また、現在の好況局面を通じてこの差が縮まる様子は見られない。

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