育児期間中の労働者支援拡充の動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年1月

丸々1年間の育児休暇中の給与の80%を手当として支給する法律に加え、育児に対する重要な公的支援の拡充が、9月初めのスウェーデン労働組合総同盟(LO)大会での首相の演説で提唱された。首相は、公的保育料金に上限を設定すると約束したのである。

現在、地方公共団体に支払われる子どもの保育料は、児童1人当たり月1000から3000クローネ(1クローネ=11.71円)の間で、親の収入に基づく段階的料金を含み、地方自治体の決定に従っている。2001年1月1日から、児童1人当たりの保育料の最高額は月1200クローネに、2人では2000クローネになる。地方自治体は、両親の支払超過分の払い戻しを行えるように中央政府から補助金を受け取る。これは、たとえばストックホルムに住む親の場合、保育所(Dagis)に預けている2人の子どもについて、1カ月当たり最高2000クローネの出費が減少する。

育児休暇中の手当は、所得(1カ月の所得上限は2万2000クローネ)の80%となっている。これを超える所得は補償されない。このことは、おおむねブルーカラー労働者は上限の範囲内に収まるのに対し、ホワイトカラー労働者並びに知的労働者は、育児休暇中は、所得がかなり減額されることを意味する。また、補償が低水準なので、収入の少ない母親が、たいてい収入の多い父親よりも長い育児休暇を取るようになる。そのため、育児休暇法は、男女機会均等法に違反しているとみなされうる。

こうした状況で、多くの全国および地方ホワイトカラー労組は、法定の所得上限である2万2000クローネを超える部分についても、80%の所得を保証するか、あるいは長短様々な期間にわたり、80%に10%以上を上乗せする、部門ないし地域協定を結んでいる。

とりわけコンピューター部門において顕著であるが、使用者は、若い男女の専門家を採用する手段として、所得上限を撤廃することが賢明であると考えているようである。このことから、エリクソン社が付加的育児給付制度に先鞭をつけたことに納得がいく。他の好例は、民間の保険会社のもので、それは、子どもが生まれた従業員に、180日間賃金の10%を上乗せし、一時祝い金として月給の65%を支給している。諸銀行は、給与の10%を360日間、それに2万7000クローネを超える給与には、その25%分を加えて支払うことに同意した。エリクソン社は、給与の10%を2カ月間、2万7000クローネを超える給与の80%を6カ月間支払っている。テリア、ABB、SSAB、スタトイルなど他の会社も、類似の取り決めに同意した。

民間事務技術系職員労働組合(SIF)は、早くも1947年に、母親の育児休暇に対する特別給付を取り決めている。これは後に、法定の育児休暇中の手当として、1年間の勤続後は1カ月、2年間の勤続後は2カ月、毎月の給与の10%を支給するように変更された。

この協約には、エンジニアリング産業経営者団体連盟(VI)、工業・サービス業使用者団体であるALMEGA、そしてその他2~3の小さな部門の使用者団体が署名している。しかし、それは、女性しか対象としていないので、明らかな男女機会均等法違反である。機会均等法第18条は、「使用者が、ある従業員に、性の異なる他の従業員よりも低い賃金を支払うこと、あるいは劣った労働条件を提供することは、性に基づく差別である」としている。

商業俸給労働者組合(HTF)と新聞経営者連合との間の協約が、労働裁判所で審理されたことがある。労働裁判所は、母親に4年間、給与の10%を給付する協約は、父親も対象とするように改正されなければならないと決定した。SIF はその後、VI との間で結んだ、母親に育児期間中2カ月間の給付を行う協約に、父親も含めるよう訴えた。しかし、使用者側は、8週間の母親に対する追加的育児給付は、医学的理由に基づいていて、雇用平等とは関係がないと労働裁判所の裁判官の多数派を説得できる医学専門家を見つけ出したので、SIF は敗訴した。この専門家の意見では、出産予定の母親は、出産前6週間、出産後2週間、有給の病欠の形での休暇を必要としている。合計8週間は、協定の2カ月間に合致し、父親が、雇用平等を根拠に8週間の休みを取ることができないことになる。

このため、15年前の労働裁判所の決定以降、育児休暇に対する一般的態度が変化したとしても、SIF は、母親と父親との間の厳格な均等を実現する前に、付加的育児休暇の案件を、新たな交渉の席で持ち出さなければならないのである。もっとも、もし労働裁判所が、すぐに類似の事案に対する決定を下さなければならないとしたら、出産前後の母親の健康状態をあえて問題にしようという使用者はいないだろう。もっとも最近でも、意識が変わっていない人もあり、経営者連盟(SAF)専務理事が、父親は育児休暇を取ることを奨励されるべきでないと語ったと公に引用されることがある。

父親と母親が、育児休暇をより均等な日数で取得すべきことは、今日、穏健派より左寄りの全政党の一般的政策となっている。また、数カ月間の育児休暇期間延長案も、父親は、6カ月間以内の育児休暇を取らなければならず、そうでなければ権利を失うとの規定を含むものになるだろうと予想されている。

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