ポーランド/労働統計に見る労働市場

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年1月

ポーランドでは、およそ女性の14%、男性の59%が給与所得者、使用者または自営業者として働いている。生産年齢人口では、女性(18~59歳)の約60%、男性(18~64歳)の70%超が働いている。

就業者の大多数が給与所得者であり、1998年には女性労働者の76.1%、男性労働者の71.4%が給与所得者であった。残りの労働者グループ(24~29%)は、使用者、自営業者、家族従業者である。

雇用機会に関係のある差別や職場における差別の問題に関する研究は、公共・民間両部門、大企業・中小企業、経済の各部門の、さまざまな職業集団を代表する従業員に焦点を当てている。女性給与所得者526万2000人のうち、227万人(43.1%)が民間部門で雇用されている。男性給与所得者合計601万1000人のうち、314万4000人(52.3%)が民間部門で雇用されている。

性別と雇用との関係

女性は保健・医療サービス、教育制度、ホテル・レストラン、金融サービスに従事する従業員の大多数を占めている。伝統的に女性は、看護婦、教員、事務員、販売員として働いている。高度な資格を持つ専門家に占める割合は3分の2であるが、単純労働を遂行する無資格労働者に占める割合も50%を超えている。

男性は機械・機器のオペレーターと産業労働者・職人の大多数(それぞれ87%、80%)を構成している。また、上級事務員・管理者と議員の大多数(およそ62%)を占めている。

女性の平均教育水準は、男性よりも高い。女性給与所得者全体では、中等職業教育修了者が最も多い。男性給与所得者では、基礎中等職業教育修了者が最大グループを構成している。依然として、大卒女性の割合がより急速に上昇している。

産業別、職業別女性従業員の割合(%)(1998年11月)
産業別 女性の割合(%) 職業別 女性の割合(%)
農業、狩猟および林業 26.1 議員、上級事務員および管理者 38.4
鉱業および採石業 11.7 専門家 64.1
生産 40.4 技術者およびその他の中級スタッフ 60.0
電気・天然ガス・水道供給 20.8 事務員 76.7
建設業 9.4 個人サービス・スタッフおよび販売員 70.4
販売および修理 57.7 農場主、野菜栽培者、林業者および漁師 25.0
ホテルおよびレストラン 74.7 産業労働者および職人 19.8
輸送、保管および通信サービス 30.1 機械・機器のオペレーターおよび組立工 13.4
金融サービス 69.7 単純作業労働者 54.3
不動産サービスおよび企業向けサービス 42.7 全体 46.7
行政および国防 44.7
教育 75.3
保健・医療および社会福祉 81.6

性別と賃金との関係

従業員の賃金は、性別と大いに関係がある。女性の平均給与は、男性よりも24%少ない。賃金が全体平均以下の労働者の割合は、男性が56%、女性は74%である。女性の賃金と男性の賃金との関係を見ると、民間部門の女性よりも公共部門の女性の方が不利である。女性の平均賃金は、民間部門では男性の平均賃金の82%、公共部門では74%に等しい。

平均賃金水準は、経済を構成する職業集団・区分によって明確に異なる。平均賃金以下の賃金を受け取っているのは、特別な資格のいらない単純作業労働者の大多数であり、農業やサービス業に従事する労働者である。これらのグループにおいてさえ、賃金が平均を下回る女性の割合は、賃金が平均を下回る男性の割合よりも大きい。

職業別全国平均賃金以下の労働者の割合(1998年10月)
職業 全体 女性 男性
全体 65.1 73.4 57.1
上級事務員および管理者 16.2 20.5 13.2
専門家 50.1 58.6 33.3
技術者及びその他の中級スタッフ 62.5 71.7 42.8
事務員 67.9 68.8 65.2
個人サービス・スタッフおよび販売員 86.9 93.8 73.6
農場主、野菜栽培者、林業者および漁師 84.5 92.1 82.5
生産労働者および職人 69.2 92.3 63.4
機械・機器のオペレーターおよび組立工 62.6 75.8 60.0
単純作業を遂行する労働者 92.1 86.2 86.2

出所:「1998年10月の職業別賃金」Central Statistical Office、1999年

性別と雇用機会との関係

雇用機会、すなわち就職できる見込みは、求人1人当たりの失業者数を計算することによって包括的に測定できる。公共職業安定所制度には、性別による求人の区別はない。しかし、女性は失業者総数の過半数(1998年12月に59%、99年12月には56%)を占めている。ある程度まで就職見込みを反映するファクターである失業率は、男性よりも女性の方が高い。1997年の労働力人口100人当たりの平均失業者数は、女性12.0人、男性8.7人であった。

職業安定所が収集した統計データによれば、女性は、男性ほど失業給付の受給権を与えられていない。これは特に、女性は、家庭での責任を果たすために仕事を中断したのち雇用市場に復帰する場合が男性よりも多いためであろう。1998年12月には、失業給付を受給している女性失業者の割合は17.4%であったが、失業給付を受け取る権利のある失業者の平均割合は23%に達した。1999年12月には、女性の18.6%、男性の29.8%が失業給付の受給権を与えられていた。

全国労働局の1999年の月例統計によれば、99年1月にレイオフされた労働者の人数は女性9万2100人、男性4万6000人で、99年12月に職場関連の理由で失職した労働者の人数は女性11万2700人、男性6万1700人であった。1999年にポーランドで失業水準が上昇した新しい理由としては、保健・医療・教育・行政制度で社会改革が実施され、これが雇用にも影響を及ぼしたことが挙げられる。中央統計局が国民の経済活動に関して実施した研究や世論調査に基づく研究は、就職機会の問題を別の視点から見ている。まず第1に、これらの研究によれば、職を失う頻度は男性よりも女性の方が低いが、男女ともに失業の理由としては失職が最も多かった。しかし、以前に働いていた女性・男性失業者の構造と退職理由別の分類をより子細に調べてみると、職場の閉鎖と職務の整理統合が、男女ともまったく同様に出現する失業理由となっていた。1996~98年には、以前に働いていた男女労働者の約30%が、職場の閉鎖や職務の整理統合で仕事を失った。

適切な仕事が見つかる可能性は、職業安定所の求人数だけでなく、失業者本人の就職活動にもかかっている。男女ともに基本的な求職方法は、職業安定所であった。この方法を利用する労働者は、男女ともほぼ60%を超えている。親類や知人を通して、あるいは職場を訪問して仕事を探す失業者も多い。この方法を利用する頻度は男女とも同程度である。

失業者を初めとする求職者が使用者優先の労働市場に適合する要素として、特に居住地の変更や職業・資格の変更、職業的威信の低下の受容を要求する雇用に就くことにもやぶさかでないとする考え方が挙げられる。

ポーランドでは、居住地を変更したり、永住地を離れての雇用を受け入れたりしようと考える人は少ない。この傾向は女性の方が強く、居住地の変更を必要とする雇用に進んで就く意思のある労働者の割合は、女性の約17%に対し、男性では33%を超えている。一方、失業者では(男女ともに)仕事に就くために職業や資格を変更する決意のある人が、明確に多数派(およそ80%)を占めている。失業者の過半数(女性の56%、男性の58%)が、仕事に就くために職業的威信の低下を受け入れる意思を示している。

就職機会の一般的特徴を男女求職者別に示す上述の数字によりポーランドの労働市場を包括的に分析すれば、男女の雇用機会が不平等であることを証明するのは難しい。ここでの分析は、ポーランド各地の労働市場の違いを考慮に入れていないが、失業水準が平均をはるかに上回る地域がいくつかあることが分かっている。

理由別に見た失業者
  女性 男性
1996 1997 1998 1996 1997 1998
合計 100 100 100 100 100 100
過去に雇用された経験なし 22.2 21.9 23.0 22.0 20.8 20.7
年金・退職年金* 5.0 5.3 6.1 7.5 8.4 9.4
職場の閉鎖または職務の整理統合 33.3 32.1 30.6 32.9 29.0 29.9
その他の理由による失職* 6.4 5.9 6.9 9.2 10.1 9.0
労働条件に不満* 4.0 4.5 4.4 9.3 9.1 8.4
短期・有期労働の終了* 14.2 14.0 12.3 15.1 17.1 16.4
家庭・個人的理由* 14.9 15.6 16.0 2.7 3.3 3.9

*過去に雇用されたことのある者だけに関する数字

出所:「1998年のポーランド国民の経済活動」(Central Statistical Office)に基づいて計算

求職方法別に見た失業者(%)
求職方法 女性1997年* 女性1998年* 男性1997年* 男性1998年*
職業安定所 67.3 62.8 63.7 58.4
新聞広告 15.0 17.5 15.3 17.2
親類・知人 44.6 42.4 41.2 38.5
職場訪問 36.1 36.7 40.9 39.8
自分で職場を設立しようと努力 1.2 0.6 2.6 2.0

*8月のデータ。複数回答。

出所:「1997年8月のポーランド国民の経済活動」Central Statistical Office;

「1998年8月のポーランド国民の経済活動」Central Statistical Office

項目別移動性許容度から見た失業者(%)
以下の変更を要求する雇用を受け入れる意思
事項 女性1997年 女性1998年 男性1997年 男性1998年
居住地の変更 15.8 17.0 32.6 33.1
職業の変更 78.1 80.1 75.2 78.8
資格の変更 78.6 81.7 76.3 78.5
職業的威信の低下 58.8 56.8 56.5 58.2

出所:「1997年8月のポーランド国民の経済活動」;「1998年のポーランド国民の経済活動」

年齢と就職機会との関係

失業率は、ポーランドの労働市場で各年齢集団を取り巻く状況を適切に示す基準である。労働市場の状況は、明らかに若年層(15~24歳)にとって最も厳しいことが分かっている。15~24歳の失業率は、その上の2つの年齢集団(25歳以上)の2倍強、45歳以上の年齢集団の4倍弱である。

15~24歳の若者が失業する主な原因は、新卒者用の仕事が不足しており、最初の仕事に就けないことである。この年齢集団では、失業者の62%が最初の仕事を探しており、およそ26%が失業して新しい仕事を探している。他の(より高年の)年齢集団では逆の状況が見られる。25~54歳の失業者は、ほとんどが失職したか、雇用中断後に労働市場に復帰しようとしている人たちである。

年齢に関係なく、失業者は主に職業安定所を通して職を探している。これはすべての年齢集団に当てはまるが、退職前(55歳以上)の最高齢者は別である。この年齢層の人々は、職業安定所の求人を通して仕事に就ける見込みがないと考えている可能性がある。この年齢集団の人々は、親類や知人の援助に頼る傾向が強く、新聞広告を見て積極的に仕事を探す頻度も若い人々より高い。

年齢別失業率(%)
15~24歳 25~34歳 35~44歳 45歳以上
1995 31.7 13.3 10.7 6.8
1996* 26.6 12.1 10.1 6.4
1997* 23.5 11.4 9.2 6.3
1998* 22.4 10.7 8.8 6.6

*8月のデータ

出所:「1998年のポーランド国民の経済活動」Central Statistical Office

年齢別・失業理由別失業者の構成(%)
年齢 合計 失職 辞職 中断後に復帰 過去に雇用されたことがない者
15~24歳 100 25.8 5.4 6.8 62.0
25~34歳 100 54.5 9.0 22.8 13.6
35~44歳 100 62.3 5.9 28.4 3.5
45~54歳 100 61.7 6.8 30.5 1.0
55歳以上 100 31.5 6.8 61.6  
平均 100 48.7 6.8 22.6 21.9

出所:「1998年のポーランド国民の経済活動」Central Statistical Office

求職方法別、年齢別に見た失業者(%)
年齢 職業安定所を通して求職 新聞広告をを通して求職 親類・知人を通して求職 職場への直接的な接触を通して求職 自分で職場を設立しようと努力
15~19歳 51.7 16.1 37.3 40.7 -
20~24歳 66.0 16.5 40.3 41.6 1.3
25~29歳 64.6 19.2 38.5 38.8 1.2
30~34歳 59.9 16.8 40.6 36.0 2.0
35~44歳 65.9 16.1 43.0 38.6 1.3
45~54歳 55.9 17.3 40.0 34.2 1.0
55歳以上 27.4 28.8 45.2 31.5 1.4
平均 60.8 17.4 40.6 38.1 1.3

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