経営不良企業に対する整理本格化と政府の対応策

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年1月

第2次企業構造調整の本格化

政府の新たな企業構造改革方針に基づいて債権銀行団を中心に進められていた経営不良企業に対する判定の結果がようやく明らかになった。債権銀行団は11月3日、債権銀行団協議会を開き、経営不良判定対象企業287社のうち、三星商用車など18社に対しては清算、大韓通運など11社に対しては会社更生法の適用などにより市場からの退出を図るほか、高合など20社は売却(事業部門の分割売却含む)、甲乙など3社は合併などの手続に入ることを主な内容とする「第2次企業構造調整(経営不良企業判定)」の結果を発表した。

そのほか、(1)銀行の支援がなくとも独自に存続することができると判定されたのは136社、(2)一時的に流動性不足に陥る恐れがあるものの、銀行の1回の支援で再生が可能だと判定されたのは28社、(3)構造的に流動性危機に陥る恐れがあるものの、事業の見込みから再生が可能(条件付き再生可能)と判定されたのは69社に上った。ただし、経営不良企業ビッグスリーといわれる東亜建設、現代建設、双竜洋灰のうち、会社更生法適用の対象になったのは東亜建設だけで、現代建設と双竜洋灰に対しては新規融資中止と既存の与信に対する返済期限の延長(2000年末まで)を条件に自助努力で再生できなければ会社更生法の適用に踏み切ることにし、市場からの退出の判定を一時留保した。

今回の判定結果は、次のような点で1998年6月18日の第1次企業構造調整の際のそれと異なる。まず、その対象についてみると,第1次は判定対象企業313社のうち、主に上位64の大手企業グループの系列企業55社を経営不良企業と判定したのに対して、今回は、判定対象企業287社のうち、主にすでにワークアウト(企業財務構造改善作業)や会社更生法が適用されている企業と経営不良の兆候が見える中堅企業52社を経営不良と判定した。

第2に、判定基準についてみると、第1次は財務構造の健全性(負債比率と営業利益創出能力)が主な基準になったのに対して、今回はキャッシュ・フローが主な基準になった。

第3に、整理方法についてみると、第1次は55社のうち、26社が清算、11社が売却、8社が合併などで整理されたのに対して、今回は、52社のうち、20社が売却、19社が清算、10社が会社更生法の適用などで整理されることになっており、清算より売却や会社更生法適用の増加ぶりが目立っている。

このような今回の判定結果に対して早くもいくつかの問題点が指摘されている。まず、今回清算と会社更生法適用の対象企業として発表された29社のうち、21社がすでにワークアウト(3社)、会社更生法の適用(14社)、和議(4社)などの手続きに入っている点や、企業名が未公開となった売却対象企業20社の多くがワークアウトの適用を受けており、市場では「構造的な流動性危機に陥っているものの、条件付きで再生可能な企業」と分類されているといわれる点などから企業構造調整の規模を大きく見せかけるための単なる数合わせの色合いが強いのではないかという疑問の声が上がっている。そのほか、ソウル地裁破産部も「再生の可能性が高い会社更生法適用企業に悪影響を及ぼす恐れがあること」を理由に、今回の判定結果のうち、すでに会社更生法適用の手続きに入っている企業に関するものに対しては異例の反論を出している。

第2に、その一方で債権銀行側は今回の判定結果のみでなく、その行方にも全責任を負わされる反面、経営不良企業(市場からの退出企業)の数がそのまま不良債権規模で銀行経営に跳ね返ってしまう構図に巻き込まれていることもあって、市場からの退出企業を急に増やすわけにはいかず、当該企業の経営状況が好転することを期待しつつ、経営不良企業の処理を先送りせざるをえないというディレンマが見え隠れしている。

第3に、そのため、「条件付き再生可能」と判定された企業や売却対象となった企業、さらには会社更生法の適用が一時留保となった現代建設、双竜洋灰など、これからの経営改善いかんにその行方がかかっている企業が依然として多いこともあって、市場での不確実性や金融部門の構造改革における障害要因が完全に解消されたとはいえない状況である。

いずれにせよ、金融監督委員会の関係者も「企業構造調整はまだ終っていない」と認めているように、本来企業構造調整は、今回のような大量の経営不良企業の一括処理というショック療法ではなく、経営不良企業の市場からの退出の制度化と銀行による厳正な実行によってその都度行われるようにするのが本筋であり、それは既存の金融慣行の変革を意味する。企業構造調整と金融構造調整という車の両輪の行方は前者ではなく後者にかかっているだけに、新たな制度と慣行が定着するまで構造調整をめぐる試行錯誤はしばらく続くだろう。

その影響と政府の対応策

今回の企業構造調整措置で最も影響を受けるとみられるのは、整理対象企業の労働者と取引関係にある中小協力会社である。

まず、労働部が11月16日に発表した「構造調整に伴う雇用安定対策」によると、整理対象企業と協力会社合わせて5万3000人の労働者が失業するほか、年末にかけて構造調整が続くとみられる金融と公共部門で2万2000人、さらに冬季の季節的要因で失業者が急増する建設と農林水産部門で10万人、新卒失業予備軍3万人など合わせて約20万5000人の失業者が新たに発生すると予想されている。

特に、建設部門では冬季の季節的要因(建設工事の急減)に加えて今回の企業構造調整措置で14社の建設会社が清算または会社更生法の適用などで整理され、下請協力会社の連鎖倒産などが重なることもあって、建設現場の日雇労働者の大量失業が最も深刻な雇用問題として浮上してくるとみられている。

このような大量失業の事態に備えて、労働部は雇用保険事業と失業対策事業を軸にした次のような対策を講じることにしている。まず、構造調整に伴う失業者約5万人余に対して、(1)採用奨励金や就業斡旋などによる再就職支援(2万人)、(2)職業訓練などによる自営業創業支援(1万2000人)、(3)失業対策事業(1万8000人)などで就業活動を支援するほか、失業給付や家計安定支援事業などを通して生計支援にも力を入れる。特に、同失業者に対する特別職業訓練事業として、失業者に適合した職種を中心に特別訓練課程を設け、5000人を対象に訓練費用の全額、手当、食費など最高40万ウォン(100ウォン=9.45円)まで支給する事業を新たに11月から12月にかけて実施することにしている点や、失業者の発生を最少限に抑えるために「雇用調整助成金」(現在予算の30%しか実施されていないという)を積極的に活用するよう誘導することにしている点などが注目されている。

第2に、冬季の季節的要因と構造調整の余波が重なって発生する建設と農林水産業部門の失業者約10万人に対しては、12月末まで18万人規模の失業対策事業を実施するほか、2001年度の予算を第1四半期に集中的に割り当て約10万人規模の失業対策事業を続ける。また、建設現場の日雇労働者を対象にした「優先職種訓練」を2001年1月から実施するほか「日雇就業センター」を通して就業斡旋を行うことにしている。

そのほかに、構造調整に伴う事業所別労使紛争や労働界の対政府闘争(両労総の連帯闘争、構造調整反対と労働関係制度改革の連携)が激化することが懸念されるため、労働部はまず「構造調整関連の争点別に労使政協議会」を設け、労働界との対話を続けながら構造調整への協力を求めていくことにしている。また、事業所別労使紛争を未然に防ぐために、賃金の未払いに対する監督を徹底し、「賃金債権優先返済制度」の活用を支援するなど従業員の賃金と退職金を保護するとともに、整理解雇の際には法的手続きを順守するよう指導していくことにしている。

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