使用者、中高年労働者の採用を忌避

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

シンガポールでは企業は、ニュー・エコノミーの急速な変化により早く適応できる若年労働者の採用を望んでいることが、9月13日に発表された第2四半期『労働市場調査報告書』でわかった。

同報告書の数字は、雇用は拡大したものの、多くの中高年求職者が労働市場に取り残されていることを示している。失業者全体に占める40歳以上の割合は、1997年6月の31.5%から2000年6月の43.8%へと高くなっている。これとは対照的に、30歳以下の失業者の割合は同時期に45.0%から29.3%へと激減した。今年3月には、10人の中高年求職者のうち6人以上が失業後3カ月から6カ月以内に再就職したが、6月には56.6%まで落ち込んだ。

こうした結果について、人材斡旋会社の取締役ディレンドラ・シャンティラール氏は、「経験は以前ほど重要ではなくなったようで、一般的に若い世代のほうが仕事の新しいやり方への適応力がある」と語っている。

その一方で、シンガポール全国使用者連盟のコー・ジュアン・キアット専務理事は、「中高年労働者はより安定しており、経験もあり、仕事を次から次へと変えることも少ない」と、中高年労働者について肯定的な見解を示している。

全般的に言えば、就労者数は第2四半期に2万9655人増加しており、これは1998年の経済危機以降の四半期ベースで最大の増加である。

同報告書は、情報通信の専門家、技師、情報処理技術者、看護婦、その他の高度技能労働者の不足について強調しているものの、全国の失業率は労働力需給のミスマッチで6月に3.4%から3.5%に上昇している。「需要の多い技能を持つ労働者にとって市場は堅調で、賃金上昇の大きな要因となっている」が、「グローバル経済のし烈な競争に生き残るために、企業はリストラを継続するであろう」と指摘。「求職者と求人の間にミスマッチがあるかぎり、失業は経済危機以前より高い水準で推移するだろう」とも付け加えている。

技能習得に消極的な労働者

政府が技能需給のミスマッチによって高失業が構造化するのを懸念している一方で、労働者自身は、ニュー・エコノミーを生き抜く技能を身につける必要性をあまり感じていない。

シンガポール人の学習に対する傾向について労働力省が1999年に行った調査によれば、労働者の10人のうち約6人は過去3年間、職業訓練や学習に参加しておらず、10人に4人は「やりたい仕事」に関しては新しいことを学習する必要がないと思っている。

リー副首相は、「労働者が新しい技能を身につけないかぎり、新規の雇用機会が創設されても取り残されてしまう」と指摘し、知識集約型経済下での生き残り作戦として生涯学習を意欲的に追求することを労働者に求めた。また企業に対しては、自社の社員教育を戦略的投資と見るように訴えた。

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