職場関係省、企業組織変更に関わる意見を求める

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

リース雇用職場関係小規模事業省長官は、2000年9月「企業組織変更と職場関係問題」と題する文書を公表し、この問題に対する関係当事者の意見を求めることとなった。この文書の大半は、政府の要請に基づき、ある法律事務所が作成した。

1914年以来、企業組織変更に関わる規定は、連邦労使関係諸法に定められており、歴史的に見ると、これらの規定は、営業譲渡等の際に元のアワードの労働条件がそのまま引き継がれることを保障しようとする目的を持っていた。

政府は、これらの規定が複雑化する企業環境や企業別交渉の流れに合致していないとの立場から、その見直しを含めた改革に関する今回の提言を文書で行った。この文書が示されたのは、連邦裁判所が最近のいくつかの判決においてこれらの規定をかなり広く解釈したことが影響している。

政府は、2000年10月末日までこの問題に関する国民の意見を求め、何らかの立法措置が必要かどうかを検討するとしている。

文書の内容

文書はインターネット上で入手可能であるが、およそ58頁にも及んでいる。文書は、まず、企業組織変更に関わる現行法上の規定を歴史的背景から跡づけ、そこから生じる実務上、法律上の問題を洗い出し検討したうえで、改革に関する方策を探っている。

改革に関する提言の部分では、第1に、企業組織の変更の定義が問題になっている。文書では、裁判所の解釈があまりに広義すぎるので、何らかの指針を示すことも有効であるとされ、海外の事例を踏まえ、いくつかの選択肢が示されている。

第2に文書は、企業組織変更に伴うアワードや認証協定、オーストラリア職場合意(AWAs)の取扱いについて言及している。まずアワードについては、職場関係法第149条で「労使関係委員会の命令を条件に、承継会社は元の会社のアワードに拘束される」と定められている。この点に関し同文書は、149条を改正し、委員会の命令がないかぎり元のアワードが承継会社を拘束しないとする案や、承継会社がすでに同じ事業について別のアワードの適用を受けているときには、元のアワードの拘束を受けないといった案などを示している。

認証協定については、職場関係法第170MB 条等に定められており、ここでは「事業承継の際には、承継会社が当該認証協定に拘束され、元の使用者は拘束を受けなくなる」とされている。ただし、元の会社が事業の一部を外部委託しただけで、認証協定の適用を受ける労働者の事実上の使用者であり続けている場合には、当該認証協定は、元の会社を拘束すると解釈されている。この点に関し同文書は、労使関係委員会が適切と考えないかぎり認証協定は承継されない、あるいは承継会社が別の認証協定や AWAs の適用を受けないかぎり当該認証協定の拘束を受ける、等の改革案を提示している。

今回の提言文書は、大きな論争を呼びそうである。オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は、今回の文書について労働条件引き下げのためだけに、アウトソーシングが利用される危険性が高まると非難している。他方、使用者団体は、概ね好意的な評価を示している。

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