雇用創出増加するも、なお高い失業率

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

通産省の最新統計によると、第2四半期(4~6月期)の新規雇用者数は3万8000人となり、経済危機以前の水準まで回復した。これで2000年上半期に創出された雇用は4万4500人となった。一方、第2四半期の解雇者数は1700人で、第1四半期の6046人から大幅に減少し、この面でも改善が見られたが、両者を合計した上半期の解雇者数は約7800人で、依然として前年同期を上回っている。いわゆるニュー・エコノミーへの移行期であることも影響して失業率も3.5%と高く、経済危機以前の水準まで低下するには至っていない。

通産省によると、第2四半期は、すべての主要部門で雇用が増加した。とりわけ事業所・個人向けサービス業が顕著で、第1四半期に6800人、第2四半期に6100人増加した。また、製造業は、第2四半期に5200人増加し、1995年第1四半期以来最大の伸びとなった。

奇妙なことに、雇用創出は、経済危機以前の水準まで回復したものの、速報値によると、6月の季節調整済み失業率は3.5%で、7万5700人が失業中ということになる。シンガポール大学計量経済学部のティラク・アベイシンへ教授は、「経済危機の期間を除けば、これは高い数値である。1985~86年の経済危機と最近の景気後退を除けば、失業率が3.5%まで高くなったことはない」と論評している。シンガポールでは、経済が好調なときの失業率は2%前後であった。

リー・ブンヤン労働力相によると、その背景には、ニュー・エコノミーに向けて企業がリストラを進めていることがある。人員削減の大半は、製造業部門で行われているが、特に中高年者や未熟練労働者の削減が続いているのは、創出された新雇用に必要な技能を身につけていないからだと同相は指摘している。

またリム・スウィーセイ通信・情報技術相兼通産相は、シンガポール人労働力の需給ギャップによる構造的失業が最小限にとどまらなければ、政府は、失業している国民がいるにもかかわらず、外国人労働者の採用拡大を求める企業の要求に応じざるをえないというジレンマに陥るだろうと警告している。

「労働者に合わせて変化の速度を落とすわけにはいかない。構造的失業を回避するためにニュー・エコノミーへの移行を減速すれば、競争力を失い、結局は失業が増える。ニュー・エコノミーで再び完全雇用を達成し持続していくには、新しい技能を修得し、労働時間や労働環境の変化に適応していくしかない」(リー・ブンヤン労働力相)。

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