基本的権利に関するEU憲章草案の発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

欧州連合(EU)域内における市民の基本的権利を単一の文書に整理統合するため、それに関するEU憲章準備草案が、8カ月間の審議を経て2000年7月28日に発表された。

同準備草案では、以下のような章立てで市民的、政治的、経済的および社会的権利が定められている。つまり、第1章―尊厳、第2章―自由、第3章―平等、第4章―連帯、第5章―市民権、第6章―公正(justice)である。

例えば、平等に関する第3章では、(1)法の下での男女平等(第20条)に始まり、(2)性別、人種、肌の色、ジェンダー、民族または社会的起源、遺伝子の特徴、言語、宗教または信念、政治的またはその他の見解、国内の少数派、財産、出生、障害、世代および性的志向に基づく差別の禁止(第21.1条)、(3)国籍に基づく差別の禁止(第21.2条)、(4)同一労働および同一価値労働に対する同一賃金の原則を含む、男女の機会や待遇の均等(第22条)、(5)社会および職業における障害を持つ人々の統合(第24条)、が定められている。

また、第4章では、雇用や社会保障に関する権利や保護が規定されている。つまり、(1)情報提供・協議に関する労働者および労働者代表の権利(第25条)、(2)団体交渉と団体行動に関する労使双方の権利(第26条)、(3)不当解雇に対する保護(第28条)、(4)被用者の健康・安全・尊厳を尊重する労働条件(第29.1条)、(5)労働時間の上限規制や、日ないし週当たり一定の休憩時間および1年当たり一定日数の有給休暇の保障(第29.2条)、(6)児童労働の禁止(第30条)、(7)仕事と家庭生活の調和(第31条)、(8)妊娠、疾病、労働災害、扶養家族、高齢または失業に際しての社会保障給付と社会福祉サービスを受ける権利(第32条)である。

同準備草案については、様々な評価がなされている。例えば、欧州労連(ETUC)は、経済的および社会的権利に関する明確さが欠如しているとし、失望している。また、イギリスの使用者団体は、同草案を「全く容認できない」と考えている。他方、欧州女性ロビーは、同草案では性差別主義者の言葉が用いられ、基本的権利としてのジェンダー上の平等というコンセプトが無視されているとみなしている。

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