農村で正式登録労働が増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

ブラジル地理統計資料院の調査によると、全国の都市の労働者で労働手帳に正式登録した割合は年々減少して、1998年には就労者の50.5%が正式登録であったが、99年は49.8%に下がり、正式登録が多かった都市部も、正式登録者の割合は半分以下になった。その半面、正式登録が非常に低かった全国の農村地帯では、1990年に22.9%だった正式登録が、98年は27.7%、99年は29.9%と増加した。

法令で労使に正式登録を義務づけているが、労働省、社会保障省に法令通りの監督業務を実施する能力がなく、都市部の監督を受けやすい企業のみが法令を厳守、郊外では企業の任意登録のような形になりつつある。

政府による監督業務が困難な農村地帯では、農作業という労働の性格と季節的作業から正式登録率は非常に低く、法的義務はありながら、登録なし労働が常識のようになっていた。労働省では、開発が進んだサンパウロ州などの農村地帯で、農場経営者がコスト節減を求めて、直接雇用よりも企業組合と農村労働者組合との間で農作業毎の契約を行うようになったことが、正式雇用の増加を促しており、来年はさらに増加すると期待している。サンパウロ州のオレンジ栽培だけで20万人の正式登録者が出現すると予想している。

しかし、サンパウロ州農業経済研究所によると、2000年の農村労働者の正式登録は増加したが、だからといって、その傾向が確立したわけではないし、正式登録の増加のためには、まずなによりも農業生産が毎年続けて増加する必要がある。また、正式雇用の増加には多くの理由が重なっており、理由を特定することは容易ではないとして、開発が進んだ州の一部農村地帯で時々監督を開始したこと、機械化により大量の農村労働者の失業が発生した代わりに、少数の訓練された専門機械工や運転手が正式契約されていることなどもその理由として指摘した。

農業経済研究所の発表によると、1990年代にサンパウロ州の農業労働者数は、14.9%減少した代わりに、正式登録率は56%から60%へ増加した。開発が遅れた州の農村地帯の正式登録は、相変わらず低調である。

正式登録すると使用者は、官庁手続きの複雑のために、その事務処理のために専門の会計事務所と契約しなければならず、また、登録により発生する社会保障分担金の大きさが、都市、農村ともに正式登録を忌避する原因となっている。社会保障分担金は、業種、給料水準、民間、公務員によって異なり、分担金の総額も、計算する人によって異なる。

登録なしの労働と正式雇用を比較すると、正式雇用の負担は、給料の120%以上になる業種があると専門家は試算している。企業家団体からは、この分担金を軽減するよう、しばしば法改正の提案が出されているが、労組の反対と、他に有効な財源確保手段を見出せない政府の方針によって前進をみていない。

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