労働移動率が上昇に転じる

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

労働力省が6月28日に発表した労働移動に関する報告書によれば、経済の回復により、労働移動率が上昇し始めている。労働市場が逼迫していることも原因となっている。

労働移動率は、自発的離職率と採用率で測定され、雇用・訓練プログラムの評価をはじめ、短長期のマクロ経済政策を導く重要な指標として利用されている。一般に、経済の拡張期には、職が豊富にあるため自発的離職率と採用はともに上昇し、後退期にはともに低下する。

報告書によると、1999年の平均自発的離職率は2.2%で98年から0.1ポイント上昇した。自発的離職率は1990年に4%を記録して以来、一貫して低下してきただけに、わずかといえども99年に上昇に転じたことを労働力省は重視している。

他方、採用率は、1990年の4.6%から97年の3%台前半まで徐々に低下してきたが、98年に2.3%に急降下した。しかし、自発的離職率と同様、1999年には上昇に転じ、2.6%を記録した。もっとも、経済危機以前の水準の3.2%にはまだ及ばない。

産業別では、1999年に労働移動率が最も高かったのは、ホテルおよびレストラン業で、4%を超えたが、これは、同部門に臨時雇用者やパートタイム労働者が多いためである。

1990年代について日本、台湾、韓国と比べると、シンガポールの労働移動率は一貫して高く、その原因として労働力省は、労働市場が概して逼迫状態にある点を指摘している。

また、1999年の離職率(辞職、退職、解雇を含む)は2.8%で、韓国の2.5%、台湾の2.3%、日本の1.9%を上回った。

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