ACTU全国大会、開催される研究側調査員

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)の全国大会が、2000年6月26日から30日にわたり開催された。これまでと異なり今大会では、貿易政策など重要な課題について活発な議論が行われた。野党労働党が政権に復帰した場合を考えると、ACTUが労働党の政策に与える影響は看過できず、今大会の行方が注目されていた。特に、労働党と ACTUの関係のあり方をめぐっては様々な議論が展開されており、労働党と ACTUとの緊張関係が今大会の隠されたテーマであるとも指摘されていた。前号でお伝えしたように、労働党と ACTUは、その政策においていかに「つかず離れず」の関係を築くかに腐心しており、そのため、すべての政策において意見を一致させている訳ではない。例えば、ACTUは、「経済自由主義」に反対する姿勢を示しているが、労働党はより現実的な路線をとっている。

いずれにせよ、労働党が労組にコントロールされているという非難をかわすためにも、ACTUの政策にはある程度の独自性が必要となっている。そのため、今大会では、今までになく活発な議論が展開されることとなった。ここではいくつかの項目ごとに、大会での議論を整理する。

貿易政策

労働党と ACTU、そして労組間ですら意見の一致をみていないのが「自由貿易(free trade)」対「公正貿易(fair trade)」をめぐる議論である。ある労組幹部は、関税引き下げが、基本的な労働基準を無視した状況の中で生み出された商品の流入をもたらし、ひいては、豪州製品の存在を危うくすると主張した。そして同幹部は、労働基準を守る必要性がないために、市場において不公正な利益を得ている国からの輸入品に対しては、「社会的関税」を課すべきであるとの提案を行った。この提案は、労働党ばかりでなく労組内からの反対意見にさらされた。ACTUは「社会的関税」ではなく、「公正貿易」に則った提案を行うと約束している。

労使関係

労使関係政策については、労働党は、ACTUに若干譲歩する姿勢を示している。具体的には、労働党は、労使関係委員会の権限強化や、同情ストを禁ずる商慣行法の第2次ボイコット規定の緩和を約束している。

議論を呼んだのは、労組を締結当事者としない認証協定の扱いについてである。認証協定は主に2種類あり、1つは使用者と労組の間で、もう1つは、使用者と過半数労働者との間で締結される。左派系労組は、後者の過半数労働者との間で締結される認証協定廃止を求めたが、労働党はこの提案には抵抗する姿勢を見せた。廃止の提案があまりに強力であったため、事態が深刻化するのを恐れた ACTU指導部が提案を取り下げるよう説得し、何とか合意を取りつけることができた。

したがって、現在では、労使関係政策について、労働党と ACTUは、大枠で意見が一致しているといってよいであろう。過半数労働者との間で締結される認証協定については、ACTUは、組合員が存在する事業所での同協定締結には反対する方針を打ち出している(左派系労組との妥協の結果であると指摘されている)。この点に関する労働党の方針は、まだ明らかにされていない。

今大会を総括すると、ACTUは、経済自由主義に反対する、働く人の独自の代弁者として自らを位置づけようと努力していたと評価できる。この独自性は、当然労働党からの独立を伴うものである。しかし、前述のように、労働党自体が自らを労働者の政党と位置づけているために、この独自性路線は必ずしもうまくいっていない。結果的に、労働党と ACTUの関係の難しさが、今大会でいっそう明らかとなったといえよう。

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