首相、解雇者基金設立を使用者連盟に要請

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

マハティール首相は2000年7月29日、退職金が支給されていない解雇者を救済するための基金の設立を検討していると発表した。

同基金案はもともと、解雇者が続出したアジア経済危機を背景に、解雇された労働者に再就職までの生活費を援助することを目的にマレーシア労働組合会議(MTUC)が1998年2月に開かれた全国労働諮問委員会で提案した。労働者が1リンギ、使用者が従業員1人当たり1リンギを、それぞれ毎月拠出する。

提案を受けて人的資源省は、1998年6月末から使用者らとの協議に入ったが、解雇労働者の保護は雇用法で十分であると使用者側はこれを拒否(本誌1999年9、10月号参照)。同省は、その後も労使双方に対する意見聴取を進めてきたが、国家経済行動評議会(NEAC)の会合で反対意見が大勢を占めたため、同案を却下する方針を固め(本誌1998年12月号)、内閣は98年11月30日、使用者コストの増大と市場競争力の阻害を危惧して最終的に同案を却下した(本誌1999年2月号参照)。

今回の政府の要請に対しマレーシア使用者連盟(MEF)は、これまでの反対姿勢を崩しておらず、基金設立よりむしろ雇用創出を優先するよう主張している。アブドゥル MEF 会長は、解雇された労働者のほとんどが1~3カ月以内に再就職していることを指摘したうえで、「退職金を払えないような経営の悪い会社の尻拭いを、基金に拠出する経営の良い会社が行うのは不公平だ」と不快感を露わにしている。

人的資源省のデータによると、2000年1月~8月5日の期間に報告された解雇者数は1万4693人で、うち会社の事業閉鎖を理由とするのは4755人。政府の調べでは、解雇者の1割が退職金を支給されていない。

フォン人的資源大臣は、こうした労働者を一時的に救済する制度の必要性を強調しながらも、税金で賄う政府運営の基金には消極的で、あくまで民間で枠組みを作成することを求めている。

解雇者数と解雇理由
解雇理由 企業数 解雇者数
閉鎖 55 4,755
企業売却 28 678
海外移転 2 256
国内移転 14 190
コスト削減 59 1,273
需要減少 202 2,543
オートメーション化 1 10
製造縮小 1 2
組織改革 84 2,931
その他 84 2,055
合計 530 14,693

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