金属労組、経営陣の高給を批判

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

スウェーデン金属労働者労働組合の(Johnsson)委員長は、スウェーデンの大手国際企業における専務取締役や役員の「信じがたい貧欲」に対抗する運動を始めたと語った。彼ら幹部の夢のような金額の給与やオプション、高額の退職金が、労働者の怒りを煽っているという。労働者は、スウェーデンの産業が高価格により世界市場から締め出されないよう、賃上げにきわめてわずかな額しか要求しないよう言われているのに、経営側が高給をとっていては、労組指導者が組合員に穏当な賃上げにとどめるように説得できないというわけである。金属労働者労働組合は、ノルウェーで最近実施された、役員の報酬増に抗議するストライキの例を指摘している。

最近問題とされているのは、経営トップや役員、ごく限られた中間管理職に与えられるストック・オプションである。最悪の事例では、保険会社スカンディアの役員が、オプション・プログラムを通じて1億クローネ(1クローネ=11.7円)を確保した。スカンディア社の株は、1997年に92%、98年に65%、99年に107%値を上げている。

労組によると、スウェーデン株式上場企業の専務取締役や最高経営責任者の報酬は、1996年から99年に61%上昇した。これに対し、同時期の民間部門ブルーカラー労働者の賃金所得は、16%の伸びにとどまっている。スウェーデンのように平等主義的な国家においては、金持ちや保守的な政党さえも、所得格差の拡大を危惧している。社会民主党のヨーラン・ペーション首相も、金属労組の主張を支持し、経営幹部の報酬を「挑発的」と呼んでいる。隣国ノルウェーで、経営幹部の報酬の大幅な上昇を目にした労働者が、通常よりも大幅な賃上げを要求し、ついに4月にゼネラル・ストライキに入ったが、スウェーデンでも同様な事態に陥るのではないかと、ペーション首相は恐れている。

大企業の経営者や役員への大盤振る舞いに対する労働組合の抗議運動は、実を結んでいる。スカンディア社の幹部のオプションについては、再交渉のうえ額が半減され、他の企業も経営トップに与える報酬の額を下げた。「貪欲な経営者」の弁解によれば、米国や英国が始めた国際的な慣行に従っているだけだという。しかし、労働組合は現在、産業界における有力な投資者である年金基金の支持を受けている。そのため、最大手の政府年金基金の役員も務めているジョンソン委員長は、諸大企業の役員会に年金基金関連の席を強く要求している。現在、大企業の役員会は、専任の経営者に支配されており、彼らはボーナスやその他の役得を互いに自由に供与しあっているからである。

スカンディア社の件については、LO組合員の年金基金であるAMFは、スカンディアに多額の投資を行っており、この3年間で、AMFが所有するスカンディア株は80億クローネ増えている。

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