新しい調停機関の利用は低調

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

2000年6月1日に発足した政府の新調停機関の主要な機能は、労働市場の当事者が対立した際に調停を行ったり、賃金決定が円滑に行われるような枠組み作りを促進することにある。ところが、この調停機関発足の2日前に、中央政府自体が国家公務員の諸組合とともに、政府部門の交渉管理機関であるArbetsgivarverketを設け、中央政府部門独自の団体交渉手続きに関して合意に達した。このため政府部門自体が、新調停機関を利用しないことになった。中央政府部門の労働側、すなわち国家公務員の諸組合は、スウェーデン労働組合総同盟(LO)、職員労働組合連合(TCO)、および大卒専門技術労働者労組連合(SACO)の傘下にあり、この合意は、約24万人の従業員に適用される。

今回の合意についての話し合いは、工業部門が類似の合意に調印した1997年にすでに始まっていた。議論にこれだけ時間を要したという事実は、解決すべき問題が単純なものではなく、関係当事者が合意を包括的なものにしたいと望んでいたことを示している。

工業部門の合意と同様、中央政府の当事者は、賃上げ交渉のスケジュールについて合意している。これは、前の労働協約の期限が切れる前に新しい労働協約を締結すること、また、労使の対立が険悪な場合に独立した議長の助けを借りて争議を避けることを目的としたものである。工業部門および地方政府の団体交渉手続きに関する合意(本誌2000年8月号参照)と同様、議長は冷却期間を定めることができる。

団体交渉のプロセスが過熱しないようにする取り決めに加え、当該合意には、政府活動、賃金決定制度、および能力開発に対する共通の姿勢が示されている。

職長および監督者が自らのストライキ権を手放す

エンジニアリング産業組合連合のVIと、職長および監督者の労働組合のLEDARNAも、新しい「協力合意」に署名し(2000年6月7日)、エンジニアリング産業における7000人の職長および監督者全員も、政府の調停機関の適用範囲からはずれることとなった。新しい協力合意は、賃上げ交渉を支部単位だけで進めていくとしている。

関係当事者によれば、今回の合意は、職長および監督者が全国レベルの賃金協約を結ぶ必要はないと決断した1993年以降の状況を成文化しただけである。協力および賃金決定制度が今回成文化されたのは、ひとえに職長および監督者を調停機関の適用範囲外に置くためである。

新しい合意は、賃金以外の事項で意見の対立があった場合、その不一致は調停に持ち込まれ、最終的に労働裁判所に付託することができる旨を規定している。労働時間に関する意見の対立については、労働時間審議会に付託できる。また、個々の賃金について、支部の関係当事者間で意見の対立がある場合は、LEDARNAとVIの間における中央レベルの団体交渉に付託できる。

製造業および地方・中央政府の従業員や職長および監督者が、使用者とともに独自の交渉制度を作り出した結果、新しい調停機関の適用を受けるのは、労働市場のわずか3分の1のみとなっている。

無視される調停機関

政府調停機関が不人気なところを見ると、その主要な役割は、労働市場当事者が自主的に調停のあり方や紛争解決方法を模索するように仕向けることにあるようである。その結果、調停についての合意形成に一定の成果をあげつつ、政府調停機関が不必要なものになっていくのである。

最初の自主的な団体交渉に関する合意は、前述のように工業部門でなされたが、インフレを誘発しない賃金協約の締結に寄与し、実質賃金の相当程度の上昇につながった。公共部門における合意もこれにならったのである。そして今、その他の部門も、工業部門における労使の経験から恩恵を受けたいと望んでいる。

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