EU諸国の倍の労災被災率

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年8月

毎年世界中で250万件の労働災害が起き、その犠牲者数は33万5000人にのぼる。ILO(国際労働機関)の数値によると、スペインの労災死亡率は、被雇用者10万人に対して10.2人と他の欧州連合諸国の倍になっていることががわかった。

国際労働安全日に労組は、全世界に向けて高い労災率に対する措置を求める呼びかけを行う予定である。ILOの推定によると、労災にともなう経済的コストは、全世界のGDPの4%に達する。先進国ほど労災は少なく、例えば、英国では労働者10万人に対する労災死亡者数が1.4人、デンマーク2.9人、オランダ3.1人、フィンランド3.2人、日本3.7人、イタリア4.5人、ドイツ4.7人、米国5.3人、カナダ6.9人、フランス7.4人となっている。

しかし、昨日労働者委員会(CC.OO.)の労災問題担当のホアキン・ニエト氏が提示したILOの数値によると、スペインはこのグループには入らず、むしろインドや中国、欧州旧社会主義国、ラテンアメリカ、カリブ海諸国と同レベルである。

労組は、政府および雇用者団体との次の会談の場で、増える一方の労災に対処を求めていく意向で、その行動計画の中でも労災の45%が集中している3万の企業での監視強化、司法権の役割の強化等を優先事項としている。同時に、企業に対して法の遵守、予防対策を求める予定である。ホアキン・ニエト氏は、「企業は労災予防を出費ではなく投資と考えるべきである」と述べている。

労働省雇用担当長官のフアン・チョサス氏も労災対策が必要であるとしており、刑事責任が発生するような労災に際しての検察当局の特別の対応を求めている。チョサス氏は、検察当局への請求をバルセロナで明らかにした。

チョサス氏は、検察側はこうしたケースに対応するための「特別担当部」を設け、司法機関と労働監査の間の協力関係を強化すべきであるとした。ただ、労災はこれで減少することはなく、企業・労組・労働者の意識向上によってしか減らせないだろうとも述べた。労働省が行った1982年から99年までのデータに基づく研究によると、労災の50%以上は、落下・打撲・工具などによる切断・過重負担によるものである。

労災件数が最も多い部門は、石炭採掘(労働者1000人に対し500件)、金属製品製造(210件)、建設(175件)、木材工業(163件)、輸送機器製造(162件)となっている。これら5部門には全労働者の12.5%が働いているが、労働者の怪我等による欠勤をともなう労災の50%、犠牲者をともなう労災の32.5%が集中している。

CC.OO. による今年1月~3月のデータでは、欠勤をともなう労災は12.9%増えているが、犠牲者をともなう労災は増えていない。この間の労災による死亡者数は261人で、1999年1月~3月期の288人より9.4%減っている。ニエト氏は、今後対策を講ずれば今年も改善傾向が続くと見ている。

労災問題は、労組と現政府の間の最初の対立の原因となった。労働安全法の不十分な適用に加え、スペイン労働市場では有期雇用が非常に多く、現場での訓練が十分になされないため、労災が起こりやすくなる状況がある。

4年前に労働災害予防法が施行されて以来、労災件数は32%も増えている。逆に1990年から同法施行の年までは労災の減少が続いていた(-50%)。就業者1000人当たりの労災件数増加率は20%に達しており、年間に労働者10人に1人が何らかの事故にあっている。近年最も増えたのは軽度の労災で、部門では建設とサービスが目立つ。もちろんこれは、両部門での雇用創出が多かったこととも関係がある。

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