労組、労働問題の解決を要求

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

スペインの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年8月

労組の労働者委員会(CC.OO.)と労働総同盟(UGT)は2000年5月1日、次回の政府との対話の限度を設定し、政府に対して「交渉を、一緒に写真をとって社会的な正統性を得ることと混同しないでもらいたい」と求めた。

CC.OO. のホセ・マリア・フィダルゴ書記長とUGTのカンディド・メンデス書記長は、政府との対話を労働市場の更なる柔軟化でなく「労働問題の解決」に向けて進めたいとしており、政府および使用者側が労組の求めに応じないならスト行動も辞さない構えでいる。労組リーダーは、メーデーの機会を利用して、政府に労災問題、雇用の不安定や失業者の50%がいずれの手当も受給できないでいる点を優先課題として扱うよう求めた。これについては、社会労働党(PSOE)および統一左翼(IU)が全面的に支持している。

一方、メーデーのデモに訪れた移民労働者は、外国人法の改正が行われるなら、労組は再び政府との対決姿勢をとるだろうとしている。労組はまた、治安警備隊の組織化擁護のために作られた連合に対し支援を表明した。

メーデーは、連休と重なり(マドリッドでは4連休)、悪天候もあって労働者の参加数は少なかった。主催者側による参加者数は2万5000~3万人だが、実際にはこの半数程度と見られる。PSOE、IUおよび新左派(NI)は労組を支持し、メーデーに参加している。PSOEのルイス・マルティネス・ノバル氏は、「労災件数の多さは正当化のしようがなく」、有期雇用の高い割合と並んで「わが国と他の欧州連合諸国との違いを見せつけている」と述べ、PSOEが労組の懸念を共有するものであることを明らかにした。この点はIUのビクトル・リオス氏も同じで、IUとしても「社会的圧力をかけることで与党民衆党 PP、政権から口先だけでない成果を引き出すのを助けたい」と述べた。

また、バスクのメーデーは、政治的分裂が色濃く影を落とした。バスク民族主義系の労組(ELA-STV、LAB)は、自治州政府に「社会主義的なバスク国の建設」を求め、「マドリッドからは政治権力の攻撃と労組のあきらめ以外の何物も期待できない」のであるから、労使関係をバスクの枠内だけに限定することで成果がえられるとした。

これに対し UGT、CC.OO.、USOは、バスク以外の地方からの移民との混合を擁護し、バスク地方にも他の自治州と同様の自由を訴えた。UGT、CC.OO.、USOはバスクの3県都で集会を行ったが、ELAとLABはビルバオだけで集会を行った。

ガリシアでは CC.OO.、UGT、CIGが組織の違いを越え共通の目標に向かって進むよう呼びかけた。バレンシア州およびその他のスペインの自治州では、労働条件の改善と雇用の不安定との戦いが主要な要求事項だった。

今年のメーデーは、近年で最も反響が少ないものだった。メーデーが月曜日と重なり連休になったため、多くの労働者が恒例の労組の集会に足を向けずバカンスに出かけてしまったからである。また、ドイツや英国のような暴力的行為は、スペインでは見られなかった。

メーデーへの参加の低さは、現在の労働者と労組の関係がどのようなものであるかを改めて明らかにした。つまり、労組は、集団交渉の場では労働者の唯一の代表機関として絶対的権限を有し、実際、スペイン人労働者の90%近くの賃金が労組の交渉能力いかんにかかっているにもかかわらず、社会的動員能力という面では低下の一途をたどっている。労働者の復権要求における労組の影響力は、有期雇用という不安定要因が比較的少ない公行政や工業部門にしぼられつつある。

2000年8月 スペインの記事一覧

関連情報