女性労働者の現状

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年7月

男性の領域へ進出する女性が増加

経営、エンジニアリング、情報技術など、これまで男性労働者で占められていた職場へ進出する女性の数が増えていることが、労働力省の調査で分かった(2000年4月13日発表)。もっとも、最高意思決定者となった例はほとんどなく、その点ではまだ、シンガポールの女性は西側先進国のキャリア女性に後れを取っている。

調査結果によれば、企業の経営層の中で女性が占める割合は、10年前の10人に2人から増加し、1999年は10人に3人となった。総数で見ると、経営の一翼を担う女性は1991年には1万400人であったが、1999年は3万700人になっている。

また、かつては男性のみの世界であった科学とテクノロジーの分野にも進出する女性も増えている。

調査によれば、エンジニアリング、IT、自然科学の分野で職をもつ女性の数は1991年の7500人から3倍に増え、1999年は2万2600人になっている。国会議員や政府高官についても女性が増えている。

しかし、大工や運転手などの筋肉労働の分野ではまだ女性の割合は低い。行政官や経営者など、意思決定にかかわるポストに占める女性の数は、女性の社会構成比率から見ればなお不十分である。

調査報告は、この分野への女性参加の程度は、社会や労働市場での女性の地位を示す指標になるとし、これに基づけば、シンガポールの女性は香港、日本、その他の東アジアの女性よりは先んじているが、米国と英国の女性にはまだ後れを取っていると述べている。

調査報告は結論として、知識集約型経済への移行によって、女性が強さを増すであろうとしている。新しい経済では、筋肉労働よりも通信能力といった「ソフトスキル」がより重要になってくるためである。そして高度な技術を要する職種で女性が代表ポストに就くことも今後は進むものと期待される、としている。

職に復帰しない母親

その一方で、結婚や出産で退職したシンガポールの女性は、日本や韓国の場合と異なり、そのまま家庭にとどまって職に復帰しない傾向にあることが、やはり労働力省の調査で明らかになった(2000年3月16日発表)。その理由として調査報告は、就業条件がフレキシブルに調整できていない点をあげている。

調査は、新しいミレニアムの開始に当たって国の状況を労働力人口の面から把握することを目的に、香港、韓国、台湾、日本、英国、米国を比較対象としてなされた。その結果、日本と韓国では子どもが就学する年齢に達したときに母親は再び職につき、米国では育児期間中でさえ仕事を続ける女性が大部分であることが分かった。

調査は、パートタイムやフレキシブルな就業条件がほとんどないことが、女性のみならず中高年層にも影響を及ぼしていることを示している。

55~64歳の就業率は43.3%で、日本の67.1%をはるかに下回る。調査報告は、パートタイムやテレワークを導入すれば高くなると述べている。雇用人口に占めるパートタイム労働者の割合は、日本では24%、英国では23%、米国では17%であるが、シンガポールでは5%以下である。

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