M21プログラム、情報通信部門で戦略的人的資源転換プログラムを試行

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

シンガポールの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年7月

1999年8月、シンガポール政府は、知識集約型経済への移行を目指して、グローバルな競争力を有する人材を開発するマンパワー21プログラム(M21)を立ち上げた。M21の勧告の一つは、シンガポールの労働者を主要成長部門の戦力になるよう訓練し、そのような部門へ送り込むことができるプログラムを開発することであった。

労働力省(MOM)は、これを情報通信部門から始めるのが適切だと判断し、シンガポール情報通信開発局(IDA)と共同で、同部門で戦略的人的資源転換プログラム(SMCP)を試行する。

以下は、MOMとIDAがプレス・リリースを通じて発表したSMCPの概略である。

戦略的人的資源転換プログラムの理論的根拠

今日、いくつかの急成長部門において深刻な人材不足が生じている。情報通信部門など新興部門のほか、伝統的な分野ながら急速な変容をとげている物流部門も同様である。これに対応するには、こうした部門で雇用されるよう学生に準備させ、その部門の労働者の技能を高めることによって、人材ストックを開発する必要がある。同時に、外国人労働者を適度に受け入れて、労働力人口の増大を計ることも必要である。

ところが、こうした措置では対応しきれない部門もある。MOMでは、そのような部門のための人的資源の「開発」と「増大」を「配置転換」によって補完しようと考えている。SMCPにより、現在関連分野に就業中の専門職を再訓練して一定の成長部門へのキャリア変更を可能にしようとするものである。

MOMはIDAと共同で、同プログラムをまず情報通信部門において試行し、労使の反応がよければ、他の成長部門に拡大する予定である。

情報通信部門

電子ビジネスの増大により、情報通信における人材需要は急増する。IDAによれば情報通信における人的資源の需要は、年に10~12%増加すると思われ、2010年までには25万人ほどの情報通信関連の労働者が必要になる。これは現在すべての企業で働く情報通信関連の労働者数9万3000人の2倍半以上にあたる。情報通信関係の人材需要が増大している問題はシンガポールだけのものではなく、世界的な現象である。例えば米国では今年、IT 職の欠員数は84万3000人になると見られている。インドではコンピューターの専門家およびプログラマーが現在約6万7000人不足している。

情報通信部門における戦略的人的資源転換試行プログラム

情報通信部門における戦略的人的資源転換試行プログラムは、まず情報通信以外の専門家300人をプログラミング、システムアナリシス、コンサルティング、ネットワーキング、データベース管理などの情報通信職に転換させることを目標とする。需要がさらに大きければ、数字をさらに大きくする予定である。現在まで、29の団体がSMCPへの参加に対して関心を示しており、うち10団体が、試行プログラムによる業務転換研修に130人以上の社員を参加させている。

奨励金

SMCPは、使用者ベースのプログラムである。このプログラムでは、雇用中の社員を転換研修に派遣したり、情報通信に関する知識・技術のないスタッフを採用して転換研修へ参加させた場合、(1)コース費用補助として、研修者1人当たり4000ドルを限度として研修費の50%を補助する、(2)研修手当として、フルタイム研修の場合、使用者が支払う給料・手当に対する財政的援助として1日当たり40ドル(1ドル=61.83円)を支給する(パートタイム研修に対する研修手当はない)、ことになっている。

適性基準

このプログラムに参加するための基本的な適性基準は下記の通り。

使用者については、(1)シンガポール法人もしくは組織であること、(2)補助金の支給を受けた社員を転換プログラム修了後、情報通信の仕事に従事させること。

研修生については、(1)シンガポール人もしくはシンガポールの永住者であること、(2)情報通信分野の学位(例えばコンピューター・サイエンスの学位)もしくは修了資格を持っていないこと、(3)以前にSMCPにより補助金を受けたことがないこと。

コースについては、(1)申請の時点で研修が開始されていないこと、(2)研修はパートタイム・ベースでもフルタイム・ベースでもよい、(3)研修期間は3カ月以上12カ月以下であること、(4)研修コースのカリキュラムはIDAの承認を受けたものでなければならないこと。

このプログラムを利用して職種転換を図りたいと考える個人が、スポンサーとなる適当な使用者ないし研修プロバイダーを見つけられない場合、両者の間を結ぶパイプ役としての便宜を、シンガポール・コンピューター協会、情報技術マネジメント協会、IDAが提供する。

このプログラムを利用して研修コースを提供しようとする研修プロバイダーは、カリキュラムの内容をIDAに提出しなければならない。会社がプロバイダーと協議の上、独自の転換研修コースを策定することも可能である

2000年7月 シンガポールの記事一覧

  • M21プログラム、情報通信部門で戦略的人的資源転換プログラムを試行
  • 女性労働者の現状

関連情報