労使関係委員会、最低賃金引き上げを決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年7月

決定内容

オーストラリア労使関係委員会(AIRC)は、オーストラリア労働組合評議会(ACTU)による生活賃金請求を受け、関係当事者の意見を審理してい
た。そして2000年5月1日に、AIRCはすべてのアワード賃金率を週当たり15豪ドル引き上げることを決定した。これにより、連邦最低賃金は現在の週385.4豪ドル(1ドル=64.65円)から週400.4豪ドルとなる。

いくつかの団体は、新税制の導入や利上げ等を理由に、アワード賃金の引き上げ延期を求めていたが、AIRCは経済状況や失業率などを考慮したうえで、このような決定を示した。

決定の中で AIRCは関係当事者から求められていたいくつかの請求を退けている。例えば、最賃引き上げに当たっては、7月に導入される消費税(GST)の影響も考慮に入れるべきであるとのACTUの主張や、週477.2豪ドル以上のアワード賃金を受けている者に対する引き上げを認めるべきではないとの政府の主張は、認められなかった。

さらに AIRCは、アワード最低賃金の引き上げ方法に言及している。つまり AIRCは、1991年4月の全国賃金ケースで最賃引き上げ分をその割合(%)で示したのを最後に、それ以降の6回の決定においてはいずれも引き上げ「額」を示してきた。6回の決定は、このアプローチにより特に恩恵を受ける低所得者層を考慮したものであった。AIRCは、次回の最賃引き上げ決定の際に、中間所得層以上の公正賃金確保という点から、前者のアプローチへの復帰が適切なのかどうかを検討する予定であるとの見解を示していた。

決定に対する反応

週24豪ドルの最賃引き上げを求めていたACTUは、今回の決定を歓迎している。ACTUのコベット書記長は、今回の決定が賃金格差の拡大に一定の歯止めをかけるものと評価した。ACTUは今後とも生活賃金請求を重視していく姿勢を打ち出し、これまでの成果を強調していた。

他方、使用者団体は、今回の決定は雇用を脅かすものと非難している。オーストラリア商業産業連盟(ACCI)は2001年6月までの最賃凍結を求めていたが、今回の決定について、現在の企業には支払う余裕がなく、労働者をレイオフせざるをえなくなるだろうとしている。

AIRCの決定は、連邦アワード制度が適用されるおよそ170万人の労働者に影響を与えると考えられている。

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