政府、労働法改正を検討

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年7月

バジパイ首相は、第36回インド労働会議総会での演説の中で、インドの厳しい労働法は、新規投資と経済の急成長を阻害していると述べ、次のように強調した。「インドは、労働法の早急で抜本的な改革なくして国際的な経済競争をするのは困難である。変化する世界市場の状況は労働法をより柔軟なものにすることを要求している」「法律的、行政的硬直性が新規の投資に対して障害となっている」。

バジパイ首相は、労働法と行政機構が経済の変化と同調するよう変革されるときにのみ、経済の自由化からの恩恵は大きなものとなると述べるとともに、政策はサービス業や小規模産業の雇用を誘発する潜在力をもつ部門に重点的に投資が行われるよう焦点をあてなければならないと説明し、最近の新規投資は、雇用創出の潜在性の低い部門にのみ向けられ、労働者の中で大きな比率を占める技術の低い労働者の不安定な雇用状況が重要問題となっていると述べた。特に成長力の低い産業の再生を強調、関係閣僚が経営不振企業で働く労働者が直面している問題を取り除くための政策を協議していることを明らかにし、「我々は広い国土の至る所に存在する経営不振の中小企業を再生する大きな挑戦に直面している。巨大な生産資源がこれらの企業で使用されないまま置き去りにされている。他方では、我々は1ルピーの投資さえ無駄にできない状態にある」とした。また不況は部分的には民間部門での経営力の不足に原因があると説明した。

懸案となっている最低賃金基準と農業労働者の労働期間と労働条件の規範化についてバジパイ首相は、その必要性を強調しながらも、この問題は長期間の討議なしには意見の一致に達することはできないと釈明し、一方、労働省と各地方政府の労働担当部門は、農業労働者のための法律制定に関する意見の相違を早期に解決するよう要請したことを公表した。また、現行労働法は、組織労働者の福利に貢献してきたが、未組織労働者に対しては十分でなかったことを認めた。

バジパイ首相は、また公営企業の労働者に対して、労働問題は経営不振の公営企業をリストラ・再生することで解決でき、政府は、賃金に関する勧告を作成するとともに、経営不振の公営企業で働く労働者の利益を保護するために大臣で構成された対策班を再編成すると発表し、労組に対し、経済改革に積極的、協力的な態度をとるよう要請し、「政府は、改革の過程で労組がパートナーとなることを希望する。労働力・資本・経営・社会・国家が、対立・衝突をせずに互いに協力しなければならない」と強調した。

最後にバジパイ首相は、政府は、全国民の富を増加させるために国内の改革の範囲を拡大し、深め、加速しなければならない立場にあるとし、同時に農民や労働者の利益を含む国家の利益を保護・助長するために、グローバリゼーションに向かって注意を払い、政策を慎重に作成しなければならないと述べた。なお、インド労働会議は、政・労・使の三者構成の協議機関であるが、この会議では中央・州の共同管轄からくる労働立法の不統一の是正、労働争議の合理的解決方法、その他全国的に重要な労働問題についての検討、労使関係政策のあり方の協議がされてきた。

また、海外からの直接投資促進を所轄している大臣により、新経済特別区(SEZs)での労働法の緩和が検討されている。

ムラソリ・マラン商業大臣は、SEZsの特殊性について次のように説明した。

海外からの投資に対する様々な部門での規制緩和がSEZsで適用される。輸出を目標としている製造業の各企業では100%の外国資本が許可される特別条件になると予想され、こうした条件でのみ新規投資を引き出せる。しかし、SEZsについて現行労働法の緩和は審議されていない。50%の輸出を義務づけられているSEZsの企業に対し、要求されている労働法の緩和が検討されるべきである。これらの企業の多くは、輸出部門において国際的な義務を満たさなければならないので、これは国家的関心である。これにより、企業は山猫ストや他の不測の労働問題を防止することができる。

マラン商業大臣は、各州の首相にSEZsの企業に、労働法に関する特別優遇政策の認可を要請した。

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