進む高齢化社会に向けての社会保障政策

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

タイの人口構成比は、今後の20年間で60歳以上の高齢者人口が約2割(5人に1人)に達することが推測されている。退職者1人当たりに対する現役労働者の数も1999年の6.27人から3.26人へと減少し、より少ない若者が多くの高齢者を支える仕組みとなる。

高齢化問題とは、従来先進国の問題として捉えられてきていたが、発展途上国の中でも相対的に発展が進んだタイのような国では、近代医療が発達し、社会発展が進んだ結果、出生率が低下し平均寿命が伸びている。そのため高齢化現象は北米や西欧の4~5倍の速さで進んでいる。

このような高齢化社会に対応するために、社会保障制度が設けられており、以下のように分類することができる。

  1. 社会保障制度

    1991年に作られ、傷病給付、出産給付、障害給付、死亡給付の4つを含む。資金は政労使の三者から徴収されている。1999年からは、15年以上保険料の支払いをした労働者に対しての老齢給付も開始された。

  2. 政府年金基金

    公務員を対象にした年金制度。月給の3%を積み立て、政府も補助を出している。

  3. 民間部門の共済基金

    従業員と使用者からの積立てによって運営されている。

しかしながら、このような社会保障制度に参加している労働者は全体の労働者の4%にすぎない。また、現在の年金制度では、従業員が10人以上の企業を対象にするとの規定があり、少数従業員で家族経営をしている企業は制度の対象外になっている。使用者が替わった場合(転職した場合)次の職場に積立金を移行することができないといった点も問題となっている。

2000年の3月下旬には、APEC 加盟国の年金と社会保障の専門家が集まり、各国の危機的状況にある年金基金と社会保障について議論がなされた。その会合のなかで合意に達した意見としては、できるだけ早期から退職後に備えた貯蓄を行うよう奨励することによって、ソーシャルセーフティーネットの不足分を補い、社会保障制度の改革を推し進めることが重要である、という点であった。

人口の変化以外にも、核家族化が進み、複合家族の恩恵をますます受けにくくなっているという社会変化も、高齢者の負担を増加させている要因の一つとなっている。

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