工事請負業者の安全対策に減点制度を導入

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

2000年4月1日から労働力省が新たに導入した減点制度により、過去の安全記録が思わしくない工事請負業者は、外国人労働者の雇用が禁止されることになった。現在雇っている外国人労働者の契約期間を更新することもできなくなる。

同制度によれば、請負業者は、作業現場での安全に関する要求事項に違反した場合に減点ポイントが加算され、12カ月の期間中に30ポイントを超えた請負業者には、まず警告書が出される。安全記録に改善が見られず、警告書の受け取り後12カ月の期間中に24ポイントを超えた場合には、新たに外国人労働者を雇うことができなくなる。複数の作業現場を有する請負業者の場合は、各作業現場でのポイントが合計される。

外国人労働者の雇用を禁止された請負業者は、14日間、独立機関である委員会に対し嘆願することができる。委員会の参加メンバーは、人的資源省、全国労働組合会議(NTUC)、シンガポール工事請負業者協会(Scal)、シンガポール不動産開発業者協会のそれぞれの代表から成る。委員会は、嘆願に対して勧告を出すことができるが、最終決定を下すのは労働力相である。

リー労働力相は昨年、問題のある請負業者による外国人労働者雇用の道を閉ざすべきであるとして、国会に問題を提起した。その中で、請負業者が雇用者の安全について最終責任を負うという点を十分に認識させるため、より厳しい政策を打ち出す意向を明らかにしていたところである。

労働力省によれば、1999年の建設現場での死亡事故件数は減少したものの、抑制策を取らなければ労働災害率が下がらない恐れがある。1990年の建設現場での死亡事故件数は36件であったが、1998年には73件にのぼった。昨年は51人が亡くなっている。請負業者はかなりの部分を外国人労働者に頼っており、大半の業者が自国の労働者1人に対し外国人労働者5人の割合で雇っている。

労働力省は、外国人労働者の雇用が禁止された請負業者について、その作業現場の検査を続け、現場の安全状況に関する報告書を作成、6カ月後に嘆願受付機関に提出することとしている。禁止されてから12カ月のあいだで減点が24ポイントを超えることがなければ、禁止は解かれる。

警告書を受け取った業者または外国人労働者の雇用を禁止された業者が請け負っているプロジェクトの開発業者には、情報が提供される。また、開発業者は、プロジェクトの入札を希望している請負業者の安全記録を知りたい場合、労働力省に対し書面で要求することもできる。同省は、外国人労働者の雇用を禁止された請負業者のリストをインターネットのホームページに掲載することとしている。

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