労働市場改善するも、解雇つづく

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

『1999年労働市場レポート』が発表された。景気回復により雇用の創出は進むが、グローバル化を図って企業がリストラを進めるため、人員削減が依然として行われると予測している。

まず、最近の労働市場の動向についてレポートは、昨年景気が好転した結果、労働市場でもめざましい回復が見られたと述べている。労働市場が引き締まれば賃上げ圧力が高まると指摘しているが、これに対しては、コスト競争力を損ない、労働市場の回復に狂いを生じさせることになるので、賃上げのペースが生産力の上昇のペースを上回ってはならないと警告している。

1999年の雇用者数は3万9867人増加し、1998年の2万3384人の純減からめざましい回復を見せた。また失業率も、1998年の4.4%から1999年12月には2.9%まで回復している。さらに人員削減数も減少している。1998年には2万9086人と記録的な数であったが、1999年は1万4622人まで減少した。

しかし、レポートの内容はよいことばかりでない。

例えば、製造業の生産高は大きいが、同部門は高付加価値事業に移行しているため、技能水準の低い労働者が依然として職を失うことになるとしている。半導体や化学産業において雇用の創出が見込まれる一方で、製造業における雇用の増加はあまり期待できない。

また、景気が回復し雇用が創出されたとしても、急速なグローバル化や技術進歩に対応するため企業はリストラを図ることから、ある程度の人員削減は依然として行われるとしている。

労働市場の状況は改善しているものの、失業率および求人件数は、それぞれ経済危機以前の水準、約2%および4万件に達していない。リー・ブーン・ヤン労働力相は、今後5年間に見込まれる雇用創出は年間約4万5000件で、経済危機以前の1992年から1997年の年間8万3000件と比べて、かなり減少するとの見通しを示している。

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