欧州委員会、「知識経済」のための雇用戦略に着手

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

2000年2月に、欧州委員会は、いわゆる「知識経済」で必要とされる技能を労働者に提供することを目的とする雇用戦略に着手した。同戦略は、情報通信技術の提供する雇用・教育分野における格好の機会を活用し、また、政府およびソーシャル・パートナーに対して技能格差の是正のため行動するよう要請することに力点を置いている。

欧州委員会は2000年2月7日、情報社会における雇用戦略と称するコミュニケを出した。それは、教育・雇用分野におけるインターネットやその他の情報通信技術の利用を増やすための雇用戦略を促すことを目的としている。

アンナ・ディアマントポロ雇用・社会問題担当委員は、「われわれの目標は、包括的知識に基礎を置く経済の建設である。それが、将来のヨーロッパにおける雇用創出と経済成長をもたらす唯一の方法である。次世代の労働者、つまりネット世代は現在就学中である。この世代に身支度させ、知識社会の挑戦と好機をつかもうとするわれわれの行動は、将来の経済・社会発展にとって不可欠である」と述べた。

この新たな戦略に着手する理論的根拠は、次のとおりである。つまり、(1)2010年までに、全雇用のうち半数が、情報技術関連の製品・サービスの製造(提供)業、またはそのヘビー・ユーザーである産業分野における雇用であるとの予測、(2)欧州連合(EU)において、約900万人がテレワーカーであるとの事実、(3)EUには、1億1700万人の25歳未満人口のうち約8100万人が現在教育機関におり、「知識経済」における雇用のため訓練されなければならないとの推定、および、(4)「情報社会」における雇用はこれまでよりも安定性に欠け、また高技能と適応性に依存するとの確信である。

欧州委員会の戦略は、インターネットへのアクセスと通信技術の使用に関する欧米間の技能格差を是正することを主な目的とする。報告書では、次世代の労働者が知識経済の需要を満たすのに必要な技能を欠く危険性が強調される。もうすでに、欧州の情報技術分野における高技能労働者への需要は満たされておらず、2002年には、この分野で160万人の欠員が生じるであろうと見られている。このことはおのずと、ソフトウェア、サービスおよび遠距離通信等の分野における成長を妨げるであろう。

同戦略は、加盟国政府とソーシャル・パートナーに対して、次のような行動をとるよう要請する。つまり、(1)2002年までにすべての学校をインターネットに結ぶこと、(2)すべての教員が情報技能に堪能になるようにすること、(3)すべての労働者に情報技能を学ぶ機会を提供すること、(4)テレワークを容易にするため柔軟なフレームワークを確立すること、(5)障害をもつ労働者の雇用可能性を改善するため設備を改造すること、(6)税政策を通してリスクに報いる企業家精神を助長すること、および、(7)中小規模の企業における情報ツールの利用を促進することである。

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