労相が労使自由交渉を薦める

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

フランシスコ・ドルネレス労相は、3月から労働関連法規の見直しにむけて、キャンペーンを強化すると発表した。労使関係はすべて自由交渉にすべきであると考えて労組を説得すると述べた。労働法を改正するには時間を要するため、法規はそのままにしておき、労使交渉が成立しない部門だけが法規に依存し、交渉を優先させる部門は、憲法7条に定めた労働者の権利である13カ月目給料、勤続年限保障基金、休暇手当なども、交渉による決定を法令以上に優先したい意向を発表した。また法令と平行したこのような方式を導入するに当たって、労働者の不安を解消するために、すべて納得と同意が成立したあとで採用すると語っている。また労使両方の同意が成立すれば、政府は労働法改正案を国会に提出すると述べた。

労相のこの提案は、政府が労働法改正を目指しても、労使、政界の抵抗が強く、根本的改革の実現には長期を要すると考えたからである。現行労働法は、正式雇用を増加させようとする政府の方針の大きな障害となっていることを政府は認めており、その解決策を模索している。正式雇用に伴う使用者側の経費負担が、給料以上にかかるため、厳しい競争を強いられる企業が新規採用をためらったり、非公式雇用に逃避しており、正式雇用は前々減少している。

高失業率を下げられない政府は、与党からことあるごとに経済発展政策を採用して、雇用増加を図るよう圧力を受けており、今年10月の市長・市議選を控えて政治圧力が強まったために、このような労相の突然とも言える発言となったようである。これを聞いた中央労組では、とにかくどういう考えかを聞くことが先決で、労相の労使交渉提案を受け入れるかどうかの議論の段階にも至らないと見て、まだ重要な提案とは受け取っていない。

労働問題研究専門家も、突然の労相の提案の内容がよく理解できないし、また失業対策はないに等しく、失業増加を阻止する政策に効果が見えない中で、労働法を改正して効果があるものかと疑問を持っているために、国民は、労相の提案に乗ってこないとみている。

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