再び失業者数増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

1999年12月の統計では求人数が3万3000人へと6000人増加してはいるものの、完全失業者数が再び増加し、現在は1998年12月時点に比べて1万7000人増えた。好景気にも拘わらず失業者数が増加している原因は、全国労働市場庁(AMS)の優先順位の変更にある。

政府は、年4%近い記録的な経済成長により、労働失業率を4%以下に抑制できるとしている。しかし最近の雇用状況を見ると、財務省の各種予算削減は性急であったように感じられる。

例えば、厚生省は社会保険行政の為のコンピューターシステムに多額の投資を行い、また現在も計画中である。それと同時に大規模な生産性向上を見込んで人件費の予算削減を実行している。実際、コンピューター化が直ちに必要人員削減を可能にするものでもない。削減された人員では健康、福祉面での予防的手段に意を注ぐ余裕がなく、給付支払いに対応するだけでも時間外労働が増えた。その結果、福祉水準が低下し過労職員が増加した。

同様の状況が労働市場行政にも見られる。景気拡大が労働市場を好転させると踏んで、労働省が職業安定所予算を削減し、AMSに対しては高技能訓練プログラムを優先させるよう指示した。このプログラムは、主に失業率改善を意図した従来の低コスト、低技能ワークプログラムを削減する一方で、生産現場の熟練労働者不足という隘路の解消を狙ったものである。このような長期的変更は労働市場のいずれの立場からも歓迎されている。

しかしAMSへの予算割当額削減などの政策変更を急に行った結果、ワークプログラムや若年者研修労働への参加者や300日の失業手当受給後には失業統計から消えるはずの人々の代わりに失業者が増加した。1999年12月末において、39万1000人が労働市場から外れ、その内29万1000人が完全失業状態にあった。つまり完全失業率は6.8%であり、(この数字の他の)2.2%は何らかの労働市場プログラムに参加し、現在おもに新しい技能を訓練している。労働市場政策に依存する人がわずか2.2%というこの数字は、失業手当受給者が2%にすぎず完全雇用に近い状態と見なされていたかつての理想的な状況下の労働市場政策参加率に比べても低い数字である。

AMSの新しい優先順位の変更の影響は失業保険基金からの支払いにも見ることができる。1998年12月には組合失業保険基金は23億クローネを失業給付として支出したが、1999年12月にはその数字は27億クローネに増えた。1999年通年では309億クローネに上ったが、これは1998年の328億クローネに比べ減少しており、経済状況の改善を反映しているといえる。しかし政府が1999年夏AMSへの指示を変更した結果、晩秋の統計では完全失業率が悲観的に上昇した。

労働組合は今、政府の雇用政策の早急な変更と職業安定所予算の削減を批判し、政府の政策は、完全失業率4%未満の達成を危うくしていると主張する。先刻公表された失業保険制度(EIRR312)改革案で、組合は、失業者が職業安定所から紹介された求人が、職務経験のない分野であったり地元以外の職場であっても就職する義務を強化することに同意している。しかし同改革案は、個々の職業カウンセリングを増やす等、職業安定所の機能強化の必要性を高めており、職業安定所予算は削減するどころか増加すべきとする。使用者へのサービスを最優先とするAMSの新政策は、多数の低技能失業者にとり悪条件であるばかりでなく、さらに長期的に見ると国家経済に悪影響を与えるものである。

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