ホワイトカラー労働者の給与格差拡大

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

スウェーデンの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年4月

自分たちの賃金制度に労働市場の影響が及ぶことに対し、ホワイトカラー組合はブルーカラー組合より寛容である。しかしホワイトカラー組合では現在、給与格差の問題から、低所得女子組合員と高所得の主として男子組合員との間の緊張状態を生じている。

職員労働組合連合(TCO)に属する事務技術系職員労働組合(SIF)では、その給与格差は月額3万クローネ(1クローネ=12.21円)である。具体的には組合員であるフルタイム従業員の月給の最低水準は1万2000~1万5000クローネであり、最高月給は4万5000クローネを超える。SIFの統計によれば、単純作業グループ(第1職務等級)の平均月給は1万5000クローネであるが、第6職務等級では4万7000クローネを超える。職務等級の間の給与格差は拡大している。1998年の第1職務等級の昇給率は4.7%、第6職務等級は5.6%であった。1999年のSIF組合員の平均昇給率は4%だが、最高額所得層の昇給率は最低額所得層を上回った。2000年にも同様の展開が予想される。

SIF組合員を含め、労働者は一般的に賃金・給与の大きな格差を好まない。スウェーデン統計局がスウェーデン国民5000人を対象に行った世論調査では、インタビュー回答者の80%が賃金・給与の格差は大き過ぎるし、職務内容を適切に反映していないとした。給与格差が小さすぎると感じている者がかなりいるのは民間企業の専門職グループだけで、その28%であった。さらに全回答者の67%が「高所得層は、たとえ彼らの賃金要求が後回しになっても低所得層を支援すべきである」と考えている。

この調査では適切な賃金格差についても質問した。最高所得層の給与は最低水準所得層の2倍を超えるべきではないという見解は、ほぼ全員の支持を得た。またスーパーマーケットのレジ係等の最低水準所得層の賃金は、現在より少なくとも2000クローネ賃上げされるべきであると考えられている。

各職務等級の賃金・給与決定要因は何にすべきであろうか。5000人に対する調査の結果、技能、(例えば医療・介護部門における)責任、部下を管理する能力、経験、精神的ストレスの五つの主要指標を提案する人が多い。現在、給与決定において重要な要素となっている年齢、学歴、勤続年数、人員不足等の市場状況、企業収益などを重要と考える人は少なかった。

先頃SIFの主任賃金交渉者Isa Skoog女史の後任となったLars-Bonny Ramstedt氏は、給与に関係なく全組合員の利益を守るという組合の役割を変えようとしていない。ホワイトカラー労働者は職務内容を問わず同一組合に所属する。現在のこの組合組織のあり方では組合員の間に大きな賃金格差が生まれる。しかし、使用者が高所得の重要な専門家を確保するために特別の支払いをする場合は、この支出は賃上げ交渉に含めず、他の財源から調達すべきであるとLars-Bonny Ramstedt氏は付け加えた。組織的にもSIFは大々的に連帯的政策を実行することも不可能である。

すなわち、組合が最高所得層の組合員の昇給に歯止めをかける一方で最低所得層の給与を引き上げるなら、最高所得層は当該組織を離れて大卒専門技術労働者労組連合(SACO)に移るだろう。このSIFの方針の一つの結果として、SIFに所属する従業員の中には同一企業内のブルーカラー労働者の最低水準賃金よりも低水準の給料を得ている従業員も含まれている。

2000年4月 スウェーデンの記事一覧

関連情報