民間企業の付加給付に新たな動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

労働者を惹きつけ自社に留まらせるために、民間企業が新しい形の付加給付を導入している。労働力省が、1999年6月に全国3000社に対象におこなった調査によると、たとえば、父親の育児休暇は民間企業の約46%が導入している。

父親の育児休暇の導入については、製造業で最も進んでおり、55%が導入している。そのうちの大半が多国籍企業である。また特別休暇は対象企業の85%が導入していた。金融部門では99%、つまりほぼ全ての企業が特別休暇を導入しているが、建設業では、69%にとどまっている。

こうした父親の育児休暇や特別休暇は、医療手当、残業手当、年次休暇など雇用法が定めている最低限の福利厚生に加えて給付されている。最近ではさらに、クラブ会員権、フレキシブル・ベネフィット・プラン、ストック・オプション、各種融資・助成金など、新しい方式の給付も提供され始めている。

フレキシブル・ベネフィット・プランは、別名「カフェテリア・プラン」とも呼ばれ、従業員は医療・生命・入院保険やクラブ会員権など提供されている給付の中から自由に組み合わせて選ぶことができる。

もっとも、同制度を導入しているのは今のところ、シティバンク、DBSランド、IBM など、ごく一部の多国籍企業にかぎられ、対象企業の0.8%にすぎない。企業が運営コストが膨らむのを警戒しているためだ。今後導入が進められていくにしても、企業は従業員によって異なる給付を管理する新しいシステムに投資する必要がある。さらに、従業員のニーズの変化に応じて給付項目を定期的に見直さなければならず、したがって小規模企業にとってはコスト効率が悪いかもしれない。米国ではこうした給付制度はかなり広まっており、1997年には、米国の中小企業で働くフルタイム従業員の52%がカフェテリア制度の対象となっていた。

ストック・オプション(一定期間後に合意された価格で自社株を購入する権利)も従業員を惹きつけるインセンティヴとして利用されはじめている。今回の調査では、対象企業の5.2%が導入している。金融業では18%が導入しているが、建設業では0.5%にすぎない。ただし、導入している企業の81%が同制度の対象を管理職に限定しており、全従業員を対象としているのは19%にとどまる。

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