欧州司法裁判所、企業破産に直面した労働者の保護を強化
欧州司法裁判所はベル事件において、企業破産に直面した労働者の保護を強化する判決を下した。
欧州司法裁判所は、企業破産により未払いとなっている賃金を労働者に支払わなければならないのは、当該企業の支店が位置する加盟国の保障基金であると判示し、企業の最終的な閉鎖を認めた加盟国の保障基金のみが責任を負うべきであるとのイギリス政府の訴えを退けた。
本件の概要は次のとおりである。
アイルランド船会社ベル・ライン社は当初から、本拠地とは異なる国の支店、とりわけイギリス支店から企業活動を指揮していた。1997年7月、アイルランド高等裁判所は、同社に対し破産宣告を下し、管財人の管理下におくことにした。そしてイギリスの高等法院も二国間司法協力の枠内でそれを承認した。
イギリス支店の従業員200名は、整理解雇されることになり、1996年雇用権利法(Employment Rights Act of 1996)に基づき未払いの賃金、ボーナス、解雇手当を請求した。関連当局は、欧州司法裁判所のモスビーク事件判決(1997年)に照らすと、その請求に応じそれらを支払う義務がイギリスの保障基金にあると同法を解釈することはできないとし、その請求を拒否した。その後、従業員は、その関連当局の決定を不服とする訴えを労働審判所に起こし、ベル・ライン社がイギリスに恒久的な商業上の存在となっており、商業登記され、さらに社会保険料を支払ってきた点において、本件が事実関係においてモスビーク事件とは異なると主張した。それに対しイギリス政府は、モスビーク事件判決は一般原則であり、本件にも適用されるべきであると反論していた。
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