CPF使用者拠出率、2000年上半期に一部回復

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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日本の厚生年金に相当する中央積立基金(CPF)の使用者拠出率が2000年の上半期中に2ポイント前後回復することが確実となった。リー副首相は1999年9月29日、最終的な引き上げ幅の決定は第3四半期の経済指標と2000年の経済成長率予測が明らかになってからと断りながらも、1999年の経済成長率が4~5%と見込まれるため、2ポイント前後の引き上げが現実的だろうと述べた。

CPFは労働者と企業が給料の一定割合を拠出して証券などに投資し、老後に備える仕組み(注1)。拠出率はけっして小さくないため、とくに不況期には企業にとって大きな負担となる。

CPFの使用者拠出率は、経済危機対策の一環として1999年1月に20%から10%に引き下げられたが、1999年第2四半期の成長率が6.7%を記録し、4~5%の通年成長率が現実的になってきたのを背景に、全国労働組合会議(NTUC)のリム・ブーン・ヘン委員長(無任所大臣兼任)は、使用者拠出率を元の水準に戻す措置を予定より早く実施するよう政府に呼びかけていた。

今回の副首相の発言に関し、全国労働組合会議(NTUC)とシンガポール全国使用者連合(SNEF)はともに基本的に支持する意向を表明している。2ポイントの引き上げ幅について、NTUCのヘン副委員長は組合の見込み通りだとし、またSNEFのリー会長は経済の回復で使用者に加わる賃上げ圧力を緩和するだろうと述べている。

もっとも、不安材料がまったくないわけではない。業績が低迷している企業にとっては、たとえ2ポイントの引き上げでもかなりの負担となり、リストラや解雇に踏み切らざるをえない場合もおこりうる。こうしたことを懸念してリー会長は、CPFの使用者拠出率が1986年に25%から10%に引き下げられてから再び20%まで回復するのに、その間の高成長にもかかわらず8年もかかったことを引き合いに出しながら、今回に関しても20%への完全復帰は経済状況を慎重に見極めつつ十分に時間をかけるべきであり、2000年上半期の引き上げ幅が2ポイントをこえることは想定していないと暗に政府に釘をさしている。

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